MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)

2021年8月18日、東証1部上場のオンリーは、MBOによる非公開化を発表しました。当該MBOは、三菱UFJ銀行から株式取得資金を調達するデットMBOの一種です。

オンリーは、1970年創業・1976年設立の京都府京都市所在のビジネススーツを中心とした紳士服・婦人服などの製造小売業者です。

本記事では、以下のテーマに沿って、本事例について検討します。なお、本記事は公開情報に基づいて作成しているため、実際の案件の内容とは異なる可能性がある点、ご留意ください。

  • 関係者
  • 非公開化の背景・目的
  • 非公開化後の経営方針
  • スキーム

また、MBOによる非公開化の全般的な理解を深めたい方やデットMBOについて詳しく知りたい方は、こちらも記事もご参照ください。

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関係者

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)の関係者

本件の関係者は、こちらの通りです。

  • 実質的な買い手
    オンリーの中西相談役及び同氏の長男である中西氏。
  • 形式的な買い手
    オンリーの中西相談役及び中西氏が設立した買収用特別目的会社である紳士服中西(議決権の100%は中西相談役が保有)
  • 売り手
    一般株主。
    主要株主である中西相談役の親族(中西相談役本人を含む。株式保有割合の合計34.62%)は、公開買付への応募契約を締結しているとのことです。(詳細は後述のスキームで説明)
  • 取引対象
    オンリーの株式(100%)
  • 対象会社
    オンリー
  • ファイナンサー
    三菱UFJ銀行(上限39.2億円)

非公開化の背景・目的

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)の背景・目的

非公開化の背景・目的について、「外部環境」「対象会社の状況」「非公開化の必要性」の3つの観点から整理していきます。

  • 外部環境
    • 少子高齢化・人口減少による構造変化
      主にスーツを着用する15歳から64歳の人口は、長期的に減少が見込まれます。
    • 総合ECサイトやフリマアプリとの競争激化
      衣料品におけるECチャネルでの購買増加やフリマアプリによるCtoC取引の増加といった新たな競合との競争が激化しています。
    • コロナ禍における外出自粛やテレワーク増加
      リアル店舗における販売機会の減少やテレワーク増加によるスーツの非着用など、スーツ販売の減少要因となっています。
  • 対象会社の状況
    • 衣料品関連製品の単一セグメント
      事業セグメントは衣料品関連製品のみであるため、紳士用・婦人用スーツの市場動向に大きく影響を受けます。
    • 中長期的な経営戦略と迅速な意思決定体制の構築
      環境変化に対応した衣料品関連事業の強化や事業ポートフォリオの多様化、DX推進などの施策の実施及びそのための意思決定体制の構築が必要と考えています。
  • 非公開化の必要性
    • 短期的な業績悪化・株価低迷のリスク
      中長期的な視点に基づく経営戦略の実施により、短期的な業績・財務状況の悪化及び株価低迷のリスクが伴います。
    • 上場メリットの減少
      知名度・信用度の向上は相応に実現される一方、上場維持コストは多額に上っていることから、上場メリットは減少しています。

非公開化後の経営方針

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)の非公開化後の経営方針

また、非公開化後の経営方針について、「全般」「売上高増加」「コスト削減」の3つに整理します。

  • 全般
    • 事業ポートフォリオの多様化による経営の安定化
      衣料品関連事業の周辺分野や既存事業との親和性の高い分野に、M&AやJVを通じて進出し、事業ポートフォリオの分散による収益の安定化を図ります。
  • 売上高増加
    • ハイブランドとファストファッションの二極化への対応
      衣料品業界における消費者ニーズの二極化に対応すべく、高価格・低価格のそれぞれの商品に対応できる生産体制を整えます。
    • ウェブマーケティングやECストアの強化
      インターネットやデジタル領域を活用したアプローチを強化し、今後社会人となりビジネスウェアの着用機会が増えていく若年層の顧客獲得を図ります。
  • コスト削減
    • 製造工程の最適化
      低価格商品提供のため、製造工程を抜本的に見直し、製造工程の最適化を図ります。
    • デジタル技術を用いた在庫リスクの低減
      リアル店舗と製造工場をデジタル技術で最適化し、在庫リスクの縮減を図ります。

スキーム

MBO事例|オンリーのデットMBOによる非公開化(MUBK)のスキーム

本件のスキームは、以下の6つのステップから構成されています。

  • ステップ1. 買収用目的会社の設立
    対象会社の中西相談役及びその長男の中西氏は、公開買付者となる買収用特別目的会社である紳士服中西を設立します。
  • ステップ2. 応募契約の締結
    公開買付者である紳士服中西は、主要株主である中西相談役を含む中西相談役の親族と公開買付応募契約を締結します。
  • ステップ3. 株式公開買付(TOB)
    公開買付者である紳士服中西は、一般株主に対し、株式公開買付(TOB)を実施します。
    公開買付価格は1株765円(前日終値に39.34%のプレミアムを加えた価格)であり、買付総額は約37億円です。
  • ステップ4. 買収資金調達及び株式取得
    TOBの成立に伴い、公開買付者である紳士服中西は、ファイナンサーである三菱UFJ銀行からの借入により上限39.2億円の資金調達を行い、株式を取得します。
  • ステップ5. スクイーズアウト
    TOB成立後、公開買付に応じなかった少数株主に対しスクイーズアウトを実施します。スクイーズアウトにより、公開買付者である紳士服中西のみが株主となる予定とのことです。
    なお、本事例では、特別支配株主の株式等売渡請求または株式併合によりスクイーズアウトが実現される予定とのことです。
  • ステップ6. 非公開化
    以上の手続を経て、対象会社の非公開化が実現されます。なお、実務上はスクイーズアウトと非公開化のタイミングが前後する可能性がある点、ご留意ください。
    なお、本事例では通常LBOレンダーであるファイナンサーから求められる公開買付者と対象会社の合併については言及されていないため、スキームでは考慮していません。

まとめ

以上、今回はオンリーのデットMBOによる非公開化について取り上げました。

また、MBOによる非公開化の全般的な理解を深めたい方やデットMBOについて詳しく知りたい方は、こちらも記事もご参照ください。

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