経営戦略とM&A|前田工繊

経営戦略とM&A|前田工繊

経営戦略とM&A|前田工繊
経営戦略とM&A|前田工繊

福井県の土木資材大手の前田工繊は、2000年代から既存事業の強化、及び新規事業への進出の両面で、M&Aを本格的に推進し、2021年9月期の売上高の6割超は、買収先によるものです。

同社は、中長期ビジョンで掲げた2023年6月期の売上高500億円の達成に向け、「ニッチな技術力を持つ、地方のモノづくり企業」をターゲットに、現在もM&Aに注力しています。

以下、前田工繊の経営戦略とM&Aについて整理します。

また、本記事の概要は、こちらの動画でもご覧頂けます。

前田工繊はどんな会社か?

前田工繊はどんな会社か?

前田工繊の特性を表すのが、上図のグラフです。これは、前田工繊の長期的な売上高の推移を示すものであり、右肩上がりの成長を示しています。その原動力となったのがM&Aです。2002年以降の20年間で16件のM&Aを実施し、2021年9月期の売上高432億円の内、6割超は買収した企業が生み出したものです。

前田工繊の概要

前田工繊の概要

織物の産地として栄えた福井県で生まれた前田工繊は、繊維加工業の前田機業場を前身としています。1972年、繊維の賃加工業から「自社で製造し販売するモノづくり企業」への転換を目指し、「繊維」と「土木」を融合した土木資材の販売から、前田工繊はスタートしました。

1985年には、住友ベークライトの土木用樹脂ネット事業を譲り受け、最初のM&Aを実行しています。

その後、2000年代に入り、前田工繊がM&Aに本格的に取り組むきっかけとなったのは、2002年の太田工業の買収です。本件は、事業承継に課題を抱えた太田工業をM&Aにより譲り受けたものですが、同社の製品を前田工繊の販路に乗せたところ、思いがけない売上高増加につながりました。すなわち、シナジーの発生がM&A推進のきっかけになったと言えます。その後、以下のような土木資材関連会社を買収し、「土木資材のデパート」と呼ばれる存在になりました。

  • 2002年 太田工業
  • 2004年 ゼオン環境資材
  • 2005年 日本不織布
  • 2009年 サングリーン
  • 2009年 マグネ
  • 2021年 セブンケミカル

また、2011年以降は、土木資材関連会社だけではなく、新たな柱となる事業の獲得を目的としたM&Aも実施されるようになりました。2013年には経営破綻した自動車ホイールメーカーであるワシ興産及びワシマイヤーを買収し、自動車産業にも進出しました。

  • 2011年 北原電牧(電気柵)
  • 2012年 テクノス(ワイピングクロス)
  • 2013年 ワシ興産・ワシマイヤー・日本BBS(自動車ホイール)
  • 2014年 ダイイチ(撚糸・ニット)
  • 2015年 オガワテクノ(防衛製品)
  • 2016年 グリーンシステム(農業資材)
  • 2018年 釧路ハイミール(フィッシュミール)
  • 2021年 エスケー電気工業(電気柵)

このように、前田工繊は「既存事業の強化」と「新規事業への進出」という2つの方向性で、M&Aを実施してきたと言えます。

前田工繊の事業概要

前田工繊の事業概要

2002年以降、16件のM&Aを実行し、売上高を拡大してきた前田工繊ですが、現在の事業セグメントは、大きく以下の2つです。

  • ソーシャルインフラ事業
    • 土木資材が中心
    • 土木資材以外では、M&Aを通じて進出した農水産分野
  • インダストリーインフラ事業
    • 自動車ホイールが中心

前田工繊の経営戦略とM&A

前田工繊の経営戦略とM&A

前田工繊は、2019年策定の中長期ビジョン「グローバルビジョン∞(無限大) PART I」にて、2023年6月期での売上高500億円という目標を設定しています。

この目標を実現すべく、既存事業の強化及び新規事業への進出の両面で、M&Aが重要な手段と位置付けられていると言えます。

M&Aの基本方針

M&Aの基本方針

前田工繊は、「ニッチな技術力を持つ、地方のモノづくり企業」をM&Aの対象としています。これは、前田工繊自身がモノづくり企業であるため、自身のやり方・方法論を買収先にも適用・応用しやすいことが背景にあると考えられます。

また、前田工繊は、既存事業の強化及び新規事業への進出の両面でM&Aを活用していますが、新規事業としては農業ヘルスケアを次の柱となる事業領域の例として挙げています。

M&A後のPMI

M&A後のPMI

前田工繊は、M&A後、買収先に対し、まずは前田工繊のやり方を徹底させるとのことです。具体的には、前田工繊の行動指針である「真・善・美」に基づく組織作りやガバナンスの徹底が図られるとのことです。

  • 真:業績数値も含め、自分達の会社を知る
  • 善:不正の温床となりやすい不平・不満を防止する
  • 美:工場や職場など現場をキレイにする

M&Aによるシナジー

経済産業省関東経済産業局の記事によると、前田工繊は、同一事業間だけではなく、他事業との関係でも、シナジーを実現しているとのことです。

  • 販売
    • 買収先の製品を前田工繊の営業ネットワークで販売
  • 生産
    • 買収先の製造がシンプルな製品について、グループ内他社の仕事が少ない時期に製造を分担
    • 北海道のフィッシュミールメーカーにおいて、イワシ漁が無く仕事が減少する時期は、同じく道内のグループ会社である農業関係の会社の軽作業を手伝うことで、作業を分担
  • 研究開発
    • 不織布メーカーと緑化・植生製品メーカーの技術の掛け合わせによる斜面侵食防止シートの開発
    • 不織布メーカーと防衛製品メーカーの技術の掛け合わせによる医療用アイソレーションガウンの開発
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