2014年にアント・キャピタル・パートナーズが壮関に投資し、約6年の投資期間を経て、NSSKに株式を譲渡したセカンダリーバイアウト案件について解説します。セカンダリーバイアウトとはファンドの投資先を別のファンドが買収する二次買収のことです。

PEファンドのM&A|NSSKによるアントキャピタル投資先のセカンダリーバイアウト

PEファンドのM&A|NSSKによるアントキャピタル投資先のセカンダリーバイアウト

今週(2021/3/29〜4/2)のPEファンドによるM&Aニュース

2021年3月29日(月)から4月2日(金)までの1週間に公表されたプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)による主なM&A案件は、以下の通りです。

なお、前回のM&Aニュースで取り上げきれなかったため、一部26日(金)に公表された案件も入っております。

公表日買い手対象会社売り手備考
3月26日アドバンテッジ
アドバイザーズ
大成温調新株予約権
3月26日キャス・
キャピタル
日本どうぶつ
先進医療研究所
3月29日ユニゾン・
キャピタル
リライアンス
3月30日日本産業
推進機構
壮関アント・キャピタル
・パートナーズ
セカンダリー
バイアウト
3月30日ニューホライズン
キャピタル
理光フロート
テクノロジー
3月31日ヤマダイ食品茨城もぎたて
ファクトリー
農林漁業成長
産業化支援機構
Exit
3月31日LキャタルトンPHCホール
ディングス

今週は、PEファンドによる投資6件、 Exit1件が公表されています。

年度末ということもあり、多くの投資が実行されました。

個別案件の概要

各案件の概要は、以下の通りです。

なお、以下の内容は公開情報に基づき作成しているため、実際のスキームとは異なる可能性もある点、ご了承ください。

アドバンテッジアドバイザーズによる大成温調への投資案件

アドバンテッジアドバイザーズは、1997年にファンド運営を開始した日本のファンド運営会社の草分け的存在で、国内のバイアウトのみならず、PIPEs(上場企業マイノリティ投資)やアジアでの投資業務も行っています。

大成温調は、1941年の創業以来、空調・給排水衛生・電気設備工事及び建築一式工事の設計・施工管理を手掛ける請負事業者です。

今回、大成温調が第三者割当により発行する新株予約権をアドバンテッジアドバイザーズが引き受けます。加えて、アドバンテッジアドバイザーズが大成温調に対し、M&A支援を含む成長支援を行うことを内容とする事業提携契約を締結したとのことです。

キャス・キャピタルによる日本どうぶつ先進医療研究所への投資案件

キャス・キャピタルは、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレー出身の川村氏によって2003年に設立された独立系のファンド運営会社です。社名のキャス(CAS)は、「坂の上の雲」(司馬遼太郎)の訳である「Cloud Above Slope」に由来しています。

日本どうぶつ先進医療研究所は、2015年に設立され、動物病院「JASMINE どうぶつ総合医療センター」(JASMINE どうぶつ循環器病センター併設)を運営しています。

今回、キャス・キャピタルが日本どうぶつ先進医療研究所の株式を取得し、アジアを代表する動物病院グループの形成に向けて取り組んで行くとのことです。

ユニゾン・キャピタルによるリライアンスへの投資案件

ユニゾン・キャピタルは、日本のファンド黎明期である1998年に設立された老舗ファンドで、日本ファンドだけでなく、韓国ファンドも運営しています。近年の国内投資案件としては、ヘルスケアやコンシューマーでの投資実績が多くあります。

リライアンスは、広島に本社を構え、広島県内で38店舗の調剤薬局を運営しています。

ユニゾン・キャピタルは中小規模の調剤薬局のグループ化を企図しており、今回リライアンスの株式を取得したことにより、全国で149店舗の調剤薬局をグループ傘下に収めたとのことです。

日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件

こちらの事例については、以下で詳細に検討します。

ニューホライズンキャピタルによる理光フロートテクノロジーへの投資案件

ニューホライズンキャピタルは、旧フェニックス・キャピタルのメンバーが独立して設立したファンド運営会社です。近年投資件数が増加しており、2020年は7件の投資を行っています。

理光フロートテクノロジーは、1965 年に理光産業株式会社として創業し、1967 年より工業用フロートの製造を開始、昨年は経済産業省の「2020年版グローバルニッチトップ企業100 選」にも選ばれています。

本件は、事業承継案件です。なお、投資実行後の新しい経営体制として、現常務取締役である尾形隆氏が代表取締役へ就任し、ニューホライズンキャピタルから取締役及び監査役数名を派遣する予定とのことです。

農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)による茨城もぎたてファクトリーのExit案件

農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)は、農林⽔産業の成⻑産業化を図るために設⽴された官民ファンドです。

茨城もぎたてファクトリーは、茨城県の農業の六次産業化事業を行っており、2014年の設立時、A-FIVE及び今回の買い手であるヤマダイ食品も一部出資しています。

設立から6年の時を経て、A-FIVEがヤマダイ食品に対象会社の株式を譲渡することで、Exitを果たしました。

LキャタルトンによるKKR投資先のPHCホールディングスへの投資案件

Lキャタルトンは、キャタルトン、LVMHモエヘネシー・ルイ ヴィトン、グループ・アルノーの3社の提携により設立された、コンシューマ業界に特化したグローバルなPEファンド運営会社です。

PHCホールディングスは、以前はパナソニックグループに属したヘルスケア会社で、2014年に投資ファンドのKKRの傘下に加わりました。

今回、LキャタルトンはPHCホールディングスに200億円出資しました。なお、第三者割当増資によるものか、あるいは既存株主からの株式譲渡であるかは、PHCホールディングスが公表したリリースには明確に記載されていないため不明です。

なお、PEファンドそのものについての理解を深めたい方は、こちらの資料や動画もご参照ください。

▽関連資料:ファンドガイドブック

▽関連動画

投資事例:日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件

投資事例:日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件

今週3月30日(火)、日本産業推進機構(NSSK)から「株式会社壮関のNSSK IIによる株式譲受けについて」というリリースが出されました。

同日、アント・キャピタル・パートナーズからも「株式会社壮関の株式譲渡のお知らせ」というリリースが出されています。

日本産業推進機構(NSSK)は、TPGキャピタル元代表の津坂氏が設立したファンド運営会社で、通称NSSKと呼ばれています。旗艦ファンドに加え、中部・北陸に特化した地域特化型ファンドも運営しており、これまでに17件の投資実績を有しています。

一方、売り手であるアント・キャピタル・パートナーズは、日興アントファクトリーを前身とするファンド運営会社で、プライベート・エクイティ投資とセカンダリー投資の大きく2つの投資事業を展開しています。

アント・キャピタル・パートナーズについて詳しく知りたい方は、こちらの書籍もご参照ください。

▽関連書籍:

また、今回の投資対象となった壮関は、栃木県矢板市に本社を置き、茎わかめ、梅加工品、干し梅等の素材菓子を製造販売している企業です。

本件は、2014年にアント・キャピタル・パートナーズが壮関に投資し、約6年の投資期間を経て、NSSKに保有していた全株式を譲渡したセカンダリーバイアウト案件です。

なお、セカンダリーバイアウトとは、ファンドの投資先を別のファンドが買収する二次買収を指します。

それでは、次の各テーマに沿って、本投資事例の概要につき検討していきましょう。

  • 関係者
  • 背景・目的
  • スキーム

なお、以下の内容は公開情報に基づくものであり、一部推測に基づいて作成している部分もあるため、実際のケースとは異なる可能性もある点、ご了承ください。

関係者

投資事例:日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件の関係者

まず、関係者についてです。

本件における主な関係者は、次の通りです。

  • 買い手
    NSSK(正確には同社の運営ファンド)
  • 売り手
    アント・キャピタル・パートナーズ(正確には同社の運営ファンド)
  • 取引対象
    アント・キャピタル・パートナーズ(正確には同社の運営ファンド)が保有する壮関の全株式
  • 対象会社
    壮関

なお、LBOファイナンスが利用されている場合、ファイナンサーとしてLBOレンダーが登場しますが、本件ではその存在が明記されていないため、省略します。

以上が、本件の主な関係者です。

背景・目的

投資事例:日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件の背景・目的

続いて、本件取引の背景・目的についてです。

ここでは、買い手であるNSSKの観点から検討します。

NSSKとして、壮関が次のステージにさらに力強く成長するため、事業パートナーとして以下のような支援を実施するとのことです。

  • NSSK独自の経営支援パッケージである「NVP」(NSSKバリューアップ・プログラム)の活用・提供
  • NSSKメンバーが培ってきた知見や国内外のネットワークの活用・提供
  • 販売チャネルの拡大
  • 製品ラインアップの拡充
  • デジタルマーケティング施策の強化
  • 経営管理手法の導入
  • ガバナンス・コンプライアンス体制の強化
  • 壮関の経営理念である「壮関パーパス」の浸透
  • ESG活動の推進

スキーム

投資事例:日本産業推進機構(NSSK)による壮関への投資案件のスキーム

続いて、本件取引のスキームについてです。

今回は、2014年にアント・キャピタル・パートナーズが投資した段階から順を追って見ていきましょう。

  • ステップ1. アント・キャピタル・パートナーズによる株式取得
    アント・キャピタル・パートナーズは、壮関の創業オーナーから同社の株式を取得します。なお、創業オーナーも引き続き壮関株式を保有し続けていたとのことですが、どのタイミングまで保有していたか未詳であるため、以下のスキーム図では省略します。
  • ステップ2. アント・キャピタル・パートナーズによるバリューアップ
    アント・キャピタル・パートナーズは、壮関の経営全般に関してサポートすることにより、同社のバリューアップを図ります。
  • ステップ3. NSSKによるセカンダリー投資
    約6年の投資期間を経て、アント・キャピタル・パートナーズは、同社が保有する壮関の全株式をNSSKに譲渡します。NSSKは、株式の対価を支払います。

まとめ

以上、今回は日本産業推進機構(NSSK)によるアント・キャピタル・パートーナーズ投資先の壮関への投資事例をピックアップしました。

SOGOTCHA(ソガッチャ)では、毎週PEファンドが関わるM&A事例をピックアップしていきますので、ぜひご覧ください。

なお、日本で活動するバイアウトファンド・メザニンファンドについて具体的に知りたい方は、こちらの資料をご参照ください。

▽関連資料:ファンドガイドブック

毎週のニュースをご覧頂くと分かる通り、PEファンドは頻繁にM&Aを行っています。このため、あなたも急にPEファンドと関わることになるかもしれません。

例えば、

  • PEファンドの投資先について、自社に買収検討の打診があった。
  • 自社のノンコア部門について、PEファンドから買収検討の打診があった。
  • 自社のオーナーが、PEファンドへの会社の売却を検討しているらしい。
  • 今度、PEファンドのExit案件のアドバイザリーをすることになった。
  • 銀行から、成長資金の調達先としてPEファンドの紹介を受けることになった。

そのような場面で、もしご自身の横に立って一緒に交渉や検討を進めてくれるパートナーが必要と思われたなら、弊社までお問い合わせください。

弊社は、手の届くM&AアドバイザリーとしてSOGOTCHA MOA(ソガッチャモア)というM&Aアドバイザリーサービスを提供しています。

気になることがございましたら、ご遠慮なくご連絡ください。

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