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レバレッジ効果とは、LBOファイナンスを利用することで投資効率が改善する効果のこと。
LBOファイナンスには様々な制約が伴いますが、それにも関わらずLBOファイナンスが利用されるのは、このレバレッジ効果があるためです。
本記事では、このレバレッジ効果が具体的にどのように現れるのか、簡単な数値例を交えて検討します。
また、本記事の内容は動画でもご覧いただけます。
なお、本記事ではレバレッジ効果のみに注目していますが、LBO(レバレッジドバイアウト)の全体像について知りたい方は【図解】LBO(レバレッジドバイアウト)をどこよりも丁寧に解説で詳しく解説しています。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
レバレッジ効果とは?
レバレッジ効果とは、LBOファイナンスを利用することで投資効率が改善する効果のことです。
投資効率が改善するとは、例えば、LBOファイナンスを利用しない場合、投資額に対し回収額が1.5倍だったものが、LBOファイナンスを利用することで、投資額に対し回収額が2倍や3倍になるように、投資額に対する回収額の割合(投資倍率)が改善することを指します。
LBOファイナンスを利用する理由
LBOファイナンスを利用することで、コベナンツや全資産担保など、様々な制約が設定されます。(詳しくは【図解】LBOファイナンスでレンダーから要求される3つのことをご覧ください)
コベナンツとして投資制限やM&A制限が課されることで、対象会社の行動が制限されます。また、全資産担保が設定されることで、会社の資産処分が制限されます。
このように、LBOレンダーからコベナンツや全資産担保が要請されることにより、対象会社の経営の自由度や機動性が一定程度損なわれます。
そのような犠牲を払ってでも、買い手がLBOファイナンスを利用する主な理由は、レバレッジ効果を得られる点にあります。
以下、
- LBOファイナンスがない場合
- LBOファイナンスがある場合
の2つのケースで投資倍率を実際に計算して比較し、LBOファイナンスを利用することによる投資効率の改善効果(=レバレッジ効果)を検証します。
LBOファイナンスがない場合の投資倍率
まず、LBOファイナンスがない場合を検討します。
なお、LBOファイナンスを利用しない買収のことを「フルエクイティ(全額自己資本での投資)」と言い、略して「フルエク」などと業界関係者は言います。
数値例に話を戻します。
以下、次の6つの数字を追って、LBOファイナンスがない場合の投資倍率につき検討していきます。
- 買収に必要な金額
- 買収の必要資金の原資
- 投資期間中の企業価値の向上
- 回収できる金額
- 回収した資金の分配先
- 買い手の投資倍率
1. 買収に必要な金額
まず、買収に必要な金額です。
今回は、企業価値を「100」として計算してみましょう。
すなわち、買収に必要となる資金として「100」が必要になるケースです。
なお、企業価値は事業価値と現預金から構成されます。この辺りの詳細については、事業価値・企業価値・株式価値について説明したこちらの記事をご参照ください。
2. 買収の必要資金の原資
次に、買収に必要となる資金の原資についてです。
買収に必要となる資金は「100」ですが、ここではLBOファイナンスは利用しないので、必要資金の全額を自己資金で賄うケースを考えます。
すなわち、「自己資金100」が買収資金の原資となります。
3. 投資期間中の企業価値の向上
続いて、投資期間中の企業価値の向上についてです。
買い手の投資期間中、利益(キャッシュ)が蓄積すれば、企業価値は向上します。
ここでは、年間に利益が「10」生じ、それが5年間継続して合計で企業価値が「50」増加しているとして計算を進めてみましょう。
4. 回収できる金額
さて、上記投資期間中の利益の蓄積を通じて、企業価値は「150」まで向上しているとします。
この場合、買い手が投資先の売却を通じて最終的に回収できる金額は「150」です。
5. 回収した資金の分配先
回収した資金の「150」は、資金の出し手に分配されます。
LBOファイナンスを利用しない場合、回収した資金「150」は、買収資金を拠出した買い手に分配されます。
6. 買い手の投資倍率
買い手の投資倍率に着目すると、「100」の投資に対し「150」の回収を行なっているため、投資倍率は1.5倍(= 150 ÷ 100)となります。
以上が、LBOファイナンスがないの場合の数値です。
LBOファイナンスがある場合の投資倍率
続いて、LBOファイナンスがある場合を検討します。
LBOファイナンスがない場合と同様、以下の6つの数字を追って投資倍率につき検討していきます。
- 買収に必要な金額
- 買収の必要資金の原資
- 投資期間中の企業価値の向上
- 回収できる金額
- 回収した資金の分配先
- 買い手の投資倍率
1. 買収に必要な金額
まず、買収に必要な金額です。
こちらはLBOファイナンスがない場合と同様、「100」としましょう。
2. 買収の必要資金の原資
次に、買収に必要となる資金の原資についてです。
LBOファイナンスがある場合は、買収に必要となる資金は「100」の一部をLBOファイナンスで調達します。
上図の通り、ここではLBOファイナンスを「60」、自己資金を「40」とします。
これらを合算して、「100」の買収資金をまかないます。
3. 投資期間中の企業価値の向上
続いて、投資期間中の企業価値の向上についてです。
LBOファイナンスを利用する場合、借入金に関わる金利が生じます。
ここでは年間の支払利息を「3」と仮定します。
LBOファイナンスがない場合と同様、本来であれば利益(キャッシュ)が「10」生じている状態から支払利息「3」がLBOレンダーに支払われるため、1年あたりで会社に蓄積する利益は差し引き「7」となります。
よって、投資期間5年間での利益の蓄積は「35」となります。
4. 回収できる金額
さて、上記投資期間中の利益の蓄積を通じて、企業価値は「135」まで向上しているとします。
すなわち、買い手が投資先の売却を通じて最終的に回収できる金額は「135」です。
LBOファイナンスがない場合は「150」を回収できるはずでしたが、投資期間5年間の内にLBOレンダーに利息を支払ったため、その分が減少しています。
5. 回収した資金の分配先
回収した「135」の資金は、資金の出し手であるLBOレンダーと買い手に分配されます。
LBOファイナンスの出し手であるLBOレンダーにLBOファイナンスの「60」が優先的に分配され、残りの「75」については買い手に分配されます。
6. 買い手の投資倍率
それでは、買い手の投資倍率を見てみましょう。
今回、買い手が買収のために拠出した自己資金は「40」でした。
すなわち「40」の投資に対し「75」の回収を行なっているため、投資倍率は1.875倍(=75÷40)となります。
以上、LBOファイナンスがない場合とある場合の投資倍率を比較すると、次の通りです。
- LBOファイナンスがない場合の投資倍率:1.5倍
- LBOファイナンスがある場合の投資倍率:1.875倍
このように、LBOファイナンスを利用することで、買い手は投資倍率を向上させることができる、すなわち、投資効率を改善することができます。
ポートフォリオの分散
以上のように、レバレッジ効果により、買い手は個別案件について投資効率の改善を実現できます。
また、LBOファイナンスを利用することで、買い手は投資額を削減することができます。
1件あたりの投資額を削減することで、買い手はより多くの会社に投資することができます。
言い換えると、多くの会社に投資を分散できる、すなわちポートフォリオを分散できることになります。
投資における一般的な考え方として、「卵を一つの皿に盛るな(投資を分散せよ)」というものがあります。
ポートフォリオを分散する(多くの投資先に投資する)ことで、ポートフォリオ自体のリスクを低減することができます。
買い手は、LBOファイナンスを利用し個別案件に拠出する自己資金を削減することで、ポートフォリオの分散を図ることができます。
まとめ
さて、今回はレバレッジ効果について簡単な数値例を用いて解説しました。
レバレッジドバイアウトの全体像については【図解】LBO(レバレッジドバイアウト)をどこよりも丁寧に解説で詳しく取り上げていますので、ぜひあわせてご覧ください。
また、本記事の内容は動画でもご覧いただけます。
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