経営戦略とM&A|エア・ウォーター

経営戦略とM&A|エア・ウォーター

経営戦略とM&A|エア・ウォーター
経営戦略とM&A|エア・ウォーター

エア・ウォーターは、産業ガスメーカーの合併により誕生した会社ですが、「全天候型経営」という方針の下、ガスを中心とする既存事業を起点に、周辺分野への多角化を進めてきました。

同社の拡大・多角化戦略を支えたのが、M&Aによる新規事業領域への参入です。

以下では、エア・ウォーターの経営戦略とM&Aについて整理します。

また、本記事の概要は、こちらの動画でもご覧頂けます。

エア・ウォーターはどんな会社か?

エア・ウォーターはどんな会社か?

エア・ウォーターの特徴は、拡大・多角化戦略です。新事業への進出による経営の多角化、及びそれを通じた継続的な事業規模の拡大です。それを実現しているのが、同社のM&A戦略です。

エア・ウォーターの概要

エア・ウォーターは、2000年に産業ガス大手の大同ほくさんと共同酸素が合併して誕生しました。発足当初はガス事業が中心の事業構成でしたが、「全天候型経営」という方針の下、事業の多角化を進めてきました。ここで、全天候型経営とは、事業を多角化し、外部環境の「晴天」「悪天」に関わらず、安定的に収益を上げることを目的とした経営です。

エア・ウォーターの概要

エア・ウォーターの多角化は、やみくもに新規事業に参入したわけではなく、産業用ガスを中心とした既存事業を起点とし、そこから徐々に周辺分野に展開していきました。

  • ケミカル
    • 2002年
      コークス炉ガスの精製およびその副産品の販売を行うコールケミカル事業を通じて参入(2019年に譲渡)
    • 2015年
      機能化学品分野に事業領域を拡大
  • 農業・食品
    • 2002年
      エア・ウォーターの前身の1社であるほくさんにおいて、自社製品である液体窒素を活用した冷凍食品製造事業あり。そこを起点とし、2002年からハム・ソーセージの食品製造事業を本格化
    • 2009年
      ガス事業の知見をビニールハウスの二酸化炭素制御に応用すべく、トマト農園を通じて農業分野に参入
    • 2011年
      農業機械分野に進出
    • 2012年
      農産物の流通・加工分野に進出
      果実・野菜系飲料製造にも進出
    • 2016年
      和菓子・洋菓子の企画・製造に進出
  • 医療
    • 2003年
      酸素、滅菌ガスなどの販売先であった医療分野に医療設備工事を通じて参入
    • 2007年
      医療機器製造に参入
    • 2011年
      歯科技巧機器・材料分野に進出
    • 2013年
      在宅医療分野に進出
    • 2016年
      衛生材料分野に進出
      歯科診療用品分野に進出
  • 海水
    • 2006年
      エア・ウォーターの前身の1社である大同酸素が資本提携していたタテホ化学工業を通じて、海⽔から塩を取り出した後に残る苦汁(にがり)から⾼純度の⽔酸化マグネシウムを製造するマグネシア分野を通じて参入
    • 2008年
      製塩分野に事業領域を拡大

エア・ウォーターの経営戦略とM&A①(これまで)

エア・ウォーターは、2010年から2022年にかけて、3年ごとの中期経営計画で、合計2,100億円のM&A予算を設定してきました。それに対し、実際は2,398億円のM&Aを実行しました。

  • 2010〜2012年 200億円
  • 2013〜2015年 600億円
  • 2016〜2019年 600億円
  • 2020〜2022年 700億円  合計2,100億円

同社のM&A戦略を支えたのが、前述の「全天候型経営」、及び2010年に策定された長期ビジョン「売上高1兆円企業」です。新規事業への参入を通じた経営の多角化により「全天候型経営」を図りつつ、「売上高1兆円企業」を目指して事業規模を拡大する手段として、M&Aが積極的に活用されました。

多角化におけるM&Aの活用

多角化におけるM&Aの活用

前述のエア・ウォーターの多角化は、その多くがM&Aによって実現されています。

  • ケミカル
    • 2002年
      コールケミカル事業への参入=住金ケミカルの買収(2019年にコールケミカル事業を譲渡)
    • 2015年
      機能化学品分野への参入=川崎化成工業の買収
  • 農業・食品
    • 2002年
      食品事業の本格化=雪印食品北海道工場の買収。その後、2009年に相模ハムを買収し、同事業を強化
    • 2009年
      農業分野への参入=トマト農園の買収。その後、2014年にキューサイファーム千歳を買収し、農産物の生産を強化
    • 2011年
      農業機械分野への参入=ヒロシ工業の買収。その後、2013年に日農機製工を買収し、同事業を強化。
    • 2012年
      農産物の流通・加工分野への参入=トミイチの買収。その後、2015年に九州屋を買収し、同事業を強化。
      果実・野菜系飲料製造への参入=ゴールドパックの買収
    • 2016年
      和菓子・洋菓子の企画・製造への参入=プレシアホールディングスの買収
  • 医療
    • 2003年
      医療設備工事への参入=川重防災工業との業務提携から開始。2005年にグループ化。その後、2010年美和医療電機、2017年グローバルワイドの買収により、同事業を強化
    • 2007年
      医療機器製造への参入=斎藤医科工業の買収
    • 2011年
      歯科技巧機器・材料分野に進出=デンケンの買収
    • 2013年
      在宅医療分野に進出=テルモの在宅酸素・在宅輸液事業の買収
    • 2016年
      衛生材料分野に進出=川本産業の買収
      歯科診療用品分野に進出=歯愛メディカルへの資本参加
  • 海水
    • 2006年
      マグネシア分野への参入=タテホ化学工業の買収
    • 2008年
      製塩分野への参入=日本海水の買収

M&A=国内×非ガス事業が中心

M&A=国内×非ガス事業が中心

「国内・海外」及び「ガス事業・非ガス事業」の2軸で整理すると、これまでの同社のM&Aは、「国内×非ガス事業」が中心と言えます。

エア・ウォーターの経営戦略とM&A②(これから)

ここからは、2022年以降、エア・ウォーターがどのような経営戦略を掲げ、どのようなM&Aを実施するつもりなのかについて整理・検討します。

中期経営計画 terrAWell 30 1st stage

中期経営計画 terrAWell 30 1st stage

2022年7月、エア・ウォーターは、2022年から2024年度にかけての中期経営計画「terrAWell 30 1st stage」を公表しました。

同中期経営計画では、エア・ウォーターの歴史を以下の通り整理し、2022年以降を第3の創業期と位置付けています。

  • 2000年〜2009年 第1の創業:産業ガスメーカーとしての確立
  • 2010年〜2021年 第2の創業:全天候型経営の確立
  • 2022年〜2030年 第3の創業:社会課題の解決を通じた新たな企業価値の創造

同計画では、2030年度に実現を目指す経営指標として、以下の水準を掲げています。

  • 売上高:1兆6,000億円(2021年度 8,887億円)
  • 海外売上高比率:20%(同8.6%)
  • 営業利益:1,600億円(同652億円)
  • 営業利益率:10%(同7.3%)
  • ROE:10%以上(同11.5%)
  • ROIC:7%以上(同6.6%)

事業セグメントの整理

事業セグメントの整理

第3の創業期では、社会課題をビジネスチャンスとすべく、「地球環境」と「ウェルネス」という2つの成長軸に沿って、グループの事業セグメントを再整理しています。

  • 地球環境
    • デジタル&インダストリー
    • エネルギーソリューション
  • ウェルネス
    • ヘルス&セーフティ
    • アグリ&フーズ

事業別の成長方針

事業別の成長方針

今次の中期経営計画では、4つの事業セグメントに海外・地域を加えた6つの分野について、成長事業・収益基盤・育成事業の3つに分類しています。

  • デジタル&インダストリー
  • エネルギーソリューション
  • ヘルス&セーフティ
  • アグリ&フーズ
  • 海外
  • 地域

M&Aの方針

M&Aの方針

エア・ウォーターでは、直前の2019年〜2021年度のM&A予算として700億円を設定し、実際には1,146億円のM&Aが実行されました。これを受け、2022年〜2024年度の3年間では1,400億円のM&A予算が設定されています。

2030年度における目標値(売上高:1兆6,000億円、海外売上高比率:20%)、及び事業別の成長方針から、今後は海外・エレクトロニクス・機能材料の分野を中心にM&Aが推進されるのではないかと考えられます。

  • 海外
    ディストリビューターのM&Aによるガス需要・販売機能を獲得する方針。2022年、北米のガスディストリビューターであるNoble Gas Solutionsの買収
  • エレクトロニクス・機能材料
    半導体製造のバリューチェーンを支える製品群を強化すべく、高機能樹脂や回路製品をM&Aのメインターゲットとして設定し、M&Aを含む積極的な投資方針

M&A=海外が中心か

M&A=海外が中心か

上述の通り、2030年度における目標値において、海外売上高比率の上昇(8.6%→20%)がひとつの特徴と言えます。これは、直近764億円の海外売上高を3,200億円まで4倍強に増加させる計画と言えます。

ここで、今後のM&A方針について、上述で見たのと同じく、「国内・海外」及び「ガス事業・非ガス事業」の2軸で整理すると、今後はガス・非ガスに関わらず、海外でのM&Aが増加するのではないかと思われます。

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