目次
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、非上場株式を中心に投資するファンドです。
では、実際どのようなシーンで活用されているのか、ご存知ですか?
様々なシーンで活用されるPEファンドですが、今回はノンコア事業の売却(カーブアウト)に焦点をあてて解説していこうと思います。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
PEファンドとは
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、ファンドの一種です。
ファンドをその投資対象によって分類すると、大きく次の3種類に分類できます。
- 株式ファンド
- 債権ファンド
- 不動産ファンド
株式を中心に投資する株式ファンドのうち、非上場株式を中心に投資するファンドをプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)といいます。
PEファンドは、「バイアウトファンド」と呼ばれることもあります。
なお、ファンドの仕組みについては【図解】投資ファンドの仕組みを解説!ファンドの利益はどこから生まれるのかに詳しく書いているので、興味のある方はこちらもぜひご覧ください。
▽関連動画:PEファンド(2)ファンドの中でもM&Aに登場するPEファンドって??【M&Aのプロが解説!】
PEファンドが活用される場面
PEファンドは様々な場面で活躍しています。
例えば次のようなシーンでPEファンドは活用されています。
- 事業承継
- ノンコア事業の売却(カーブアウト)
- 成長支援
- 非公開化
- 事業再生
- 業界再編
今回は、この中でノンコア事業の売却(カーブアウト)について詳しく解説していこうと思います。
なお、事業承継のシーンについては【図解】事業承継ファンドはどんな場合に活用できる?そのメリットは?で詳しく紹介していますので、本記事と合わせて読むのをオススメします。
カーブアウトにおいてPEファンドを活用する理由・メリット
それでは早速、カーブアウトのシーンでPEファンドを活用する理由やそのメリットについて詳しく見ていきましょう。
「ノンコア事業の売却」ということからわかるように、多くの場合は大企業が売り手となります。
そして、その買い手には誰がなるのかというと、主に2つのパターンがあります。
- PEファンドがノンコア事業を承継する
- 当該事業部門のトップがノンコア事業を承継して独立する
次から、このパターンごとに深堀していきます。
▽関連動画:PEファンドの活用場面 概要(2)事業売却(カーブアウト)における活用方法は??【M&Aのプロが解説!】
PEファンドがノンコア事業を承継する場合の理由・メリット
まず、PEファンドが買い手となるパターンです。
売り手である(親)会社の立場から、その理由を考えると主に次の4つが挙げられます。
- ノンコア事業・子会社を売却したい
- 同業他社への譲渡は避けたい
- 急いで取引したい
- ファンドの経営支援を期待したい
特に買い手がPEファンドであることのメリットが発揮されるのは、下の3つです。
同業他社への譲渡を避けたい理由というのは、技術や知識の漏洩防止のためです。
もし買い手候補となった同業他社に悪意があった場合、その会社を買う気もないのにDD(デューディリジェンス:買収監査)だけ実施し、会社の重要な情報を取られてしまうかもしれません。
その点、金融プレイヤーであるPEファンドは、そのリスクが低いため有力な買い手候補となり得ます。
また、急いで取引したい場合もPEファンドは有力な買い手候補となるでしょう。
例えば、決算の関係で今期中にその事業を売却したいなど、その取引を急いでいたとします。
もし事業会社に譲渡するとなった場合は、社内手続きや意思決定スピードの制約から一定の検討時間が必要となるケースがほとんどです。
加えてお互いにM&Aに不慣れな場合は、さらに時間がかかってしまうこともあるでしょう。
一方、PEファンドはM&Aを生業としていますので、短期間で集中的な検討を行い、比較的スピーディに対応することが可能です。
また、経営支援を期待できるというのも、ファンドを活用するメリットの1つです。
(親)会社として「ノンコア」という判断からM&Aによる売却を決めたものの、新たな買い手のもとで成長していくことを期待するのは当然でしょう。
その事業に関わっていた従業員も新たな買い手に譲渡される場合などは、特に責任も伴うことと思います。
そこで、経営ノウハウを有するPEファンドは、将来的な成長を見据えた承継候補先となり得ます。
以上が、PEファンドがノンコア事業を承継するメリットです。
動画でわかりやすくまとめていますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
▽関連動画:PEファンドの活用場面(3)カーブアウト① 事業の売却時、PEファンドをどう使うか??【M&Aのプロが解説!】
事業部門のトップがノンコア事業を承継する場合の理由・メリット
次に、事業部門のトップが買い手となるパターンについても確認していきましょう。
このケースは、ファンドMBOと呼ばれる手法です。
MBOとは、マネジメントバイアウト(Management Buyout)の略称で、経営陣による企業買収・事業買収を意味します。
そして、ファンドを利用して実施するMBOのことを、ファンドMBOといいます。
なお、ファンドMBOのメリットやデメリットについては、MBOの資金調達方法別のメリットとデメリットを比較!ファンドMBOの場合で詳しく解説していますので、こちらもチェックしてみてください。
それでは、事業部門のトップが買い手となるケースの理由・メリットについて確認していきましょう。
売り手である(親)会社と買い手となる事業部門や子会社のトップの立場から、それぞれ次のような理由が挙げられます。
- 売り手である(親)会社にとっての理由
- ノンコア事業・子会社を売却したい
- ノンコア事業・子会社の部門トップに独立してほしい
- 同業への譲渡は避けたい
- 急いで取引したい
- ファンドの経営支援を期待したい
- 買い手となる事業部門や子会社のトップにとっての理由
- ノンコア事業・子会社を取得したいが、買収資金がない
- ファンドの経営支援を期待したい
先ほどのPEファンドが買い手となるパターンとほぼ同様ですが、ここでは買い手サイドにとっての理由について深掘りしてみましょう。
売り手買い手ともに、いくらこのM&Aについて意欲があったとしても、買い手に買収資金がないことには話が進みません。
そこで、ファンドから資金を調達することで、このM&Aを実現させることができます。
もちろん、資金調達の方法はファンドだけではありません。
例えば金融機関からローンを調達する方法もあります。
ただし、ファンドを活用することで、もう一つの理由である経営支援も期待できるのです。
事業の買い手となる方としては、今まで部門トップとして腕を奮ってきたとしても、実際に会社を経営するということになると不安もあるかもしれません。
また、売り手である(親)会社としても、初めのうちは指南役をそばに置いておきたいという気持ちもあるかもしれません。
そのような場合は、経営ノウハウを有しているPEファンドと組むことも選択肢の一つです。
▽関連動画:PEファンドの活用場面(4)カーブアウト② 事業のトップの独立時、PEファンドをどう使うか??【M&Aのプロが解説!】
まとめ
PEファンドが活用される場面は多々ありますが、今回はノンコア事業の売却(カーブアウト)の場面に注目して解説しました。
他の活用場面についても別の記事で取り上げたいと思います。