目次
今回は、新設分割と吸収分割の違いに迫ります。
文字の通り、新たに会社を新設するか、既存の会社で事業を吸収するかという捉え方もできます。
加えて、誰に事業を譲渡するのかという視点もプラスすると、スキームの特徴がよく見えてきます。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
会社分割とは
まず、会社分割の概要についておさえておきましょう。
会社分割とは、売り手から買い手に対して会社の一部の事業を分割し、譲渡することです。
会社分割における主な関係者は、次の3者です。
- 分割元の会社
- 分割元の会社の株主
- 買い手
会社分割の取引スキームについては4つの類型がありますが、いずれも一部の事業を分割して買い手に譲渡するということがポイントです。
▽関連動画:会社分割とは??/M&Aスキームを考える!会社分割(1)【M&Aのプロが解説!】
なお、会社分割と同様、一部の事業を譲渡するスキームとして、事業譲渡も存在します。
会社分割と事業譲渡の違いについては、【図解】会社分割と事業譲渡の違い!各スキームを比較しますの記事で詳しく取り上げています。
会社分割の4つの類型
会社分割は、さらに4つに分類することができます。
分類の軸は2種類あって、その組み合わせで4種類のスキームが出来上がります。
- 分社型 or 分割型
- 新設型 or 吸収型
この2つの区分を組み合わせると、
- 分社型新設分割
- 分割型新設分割
- 分社型吸収分割
- 分割型吸収分割
の4つのスキームの出来上がりです。
なお、「分社型 or 分割型」の区分は、それ即ち誰が対価を受け取るのかという区分です。
一方、「新設型 or 吸収型」の区分は、それ即ち誰に事業を分割するのかという区分です。
新設型 or 吸収型 → 分社型 or 分割型の順番で、詳しく見ていきましょう。
▽関連動画:会社分割の4類型とは??/M&Aスキームを考える!会社分割(2)【M&Aのプロが解説!】
新設分割とは
新設分割と吸収分割は、事業を譲り受ける主体が異なります。
新設分割においては、分割された事業を譲り受けるのは、分割に際して新たに設立される会社です。
そして、新設分割はさらに分社型と分割型に分けることができます。
上述の通り、分社型と分割型の違いは、誰が対価を受け取るのかという点です。
分社型は、分割元の会社が、事業を子会社として分離するイメージ。
即ち、分割対象の事業を保有する会社の株主は、分割元の会社ということです。
よって、分割した事業の対価を受け取るのは、分割元の会社です。
一方分割型は、分割元の会社が、事業を兄弟会社として分離するイメージ。
即ち、分割対象の事業を保有する会社の株主は、分割元の会社の株主ということです。
よって、分割した事業の対価を受け取るのは、分割元の会社の株主です。
やや難解ですが、イメージしづらい方は動画がオススメです。
▽関連動画:会社分割における新設型と吸収型とは??/M&Aスキームを考える!会社分割(4)【M&Aのプロが解説!】
▽関連動画:会社分割における分社型と分割型とは??/M&Aスキームを考える!会社分割(3)【M&Aのプロが解説!】
吸収分割とは
吸収分割においては、分割された事業を譲り受けるのは、買い手自身です。
吸収分割も、分社型と分割型に分けることができます。
分社型は対価の受領者が分割元の会社、分割型は対価の受領者が分割元の会社の株主となります。
イメージしづらい場合は、上記動画をもう一度見てみてください。
会社分割の4類型の完成形を比較
さて、新設型と吸収型、分社型と分割型の違いはわかりました。
でも、それらを組み合わせて出来る4つの類型がそれぞれどう違うのか、いまいちピンと来ていない人もいるのではないでしょうか。
そんな時は、それぞれのスキームの出来上がりの形を比較するとわかりやすいと思います。
それぞれ、次のようになっているのが確認できると思います。
- 新設型の場合、事業を承継するのは会社分割に際して設立された新会社
- 吸収型の場合、事業を承継するのは買い手
- 分社型の場合、会社分割の対価を受け取るのは分割元の会社
- 分割型の場合、会社分割の対価を受け取るのは分割元の会社の株主
つまり、最終的に事業を保有しているのは誰なのか?対価を受け取ったのは誰なのか?という観点で、適切なスキームを選ぶことができます。
▽関連動画:【新設or吸収】会社分割の4類型【分社型or分割型】
まとめ
さて、今回は新設分割や吸収分割をはじめとした会社分割についてご紹介しました。
文字だけ追っていると混乱してきますので、この分野は図で理解するのがオススメです。
なお、会社分割のスキームには、株主総会決議を省略できる「簡易組織再編」や「略式組織再編」が認められています。
詳しくは、それぞれこちらの記事で取り上げていますので、ぜひこちらもご覧ください。