簡易組織再編とは?合併・分割・株式交換・事業譲渡のスキーム別に解説

簡易組織再編とは?合併・分割・株式交換・事業譲渡のスキーム別に解説

簡易組織再編とは?合併・分割・株式交換・事業譲渡のスキーム別に解説

今回は、簡易組織再編である簡易合併・簡易分割・簡易株式交換・簡易事業譲渡の4つを取り上げます。

まず、簡易組織再編が適用されるスキームを確認し、続いてそれぞれのスキームについて細かな条件を確認していきましょう。

《執筆者》

PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。

簡易組織再編とは

簡易組織再編とは

簡易組織再編とは、一定の条件を満たす小型の組織再編の場合は株主総会決議による承認を不要とするものです。

なお、組織再編とは、会社の合併や分割、株式交換、事業譲渡などを指します。

簡易組織再編が可能なスキーム

簡易組織再編が可能なスキーム

簡易組織再編が可能なスキームは、以下の4つです。

  1. 合併
  2. 分割
  3. 株式交換
  4. 事業譲渡

ただし、売り手と買い手で使えるスキームが異なります。

売り手

  • (新設・吸収)分割

買い手

  • (吸収)合併
  • (吸収)分割
  • 株式交換
  • 事業譲渡(全部譲渡)

簡易組織再編の条件

簡易組織再編の条件

また、簡易組織再編となる条件も、売り手と買い手で異なるので注意が必要です。

  • 売り手側:譲渡資産が自身の総資産の5分の1以下であること
  • 買い手側:支払う対価が自身の純資産の5分の1以下であること

それでは、次から個々のスキームについて詳しく見ていきましょう。

1. 簡易合併

簡易合併の説明に入る前に、合併について簡単に整理します。

合併とは

合併とは

合併とはM&Aの一種で、複数の会社が1つの会社になることです。

ちなみにM&AはMerger and Acquisitionの略で、直訳すると(企業の)合併と買収です。

つまり、M&Aの言葉を大きく2つに分けたときの一方が、合併ということです。

そして、合併はそのスキームによってさらに2つに分類できます。

  • 吸収合併
  • 新設合併

吸収合併とは、1つの会社が存続会社となり、もう一方の会社は消滅し、存続会社に吸収される合併のこと。

新設合併とは、2社とも消滅し、新たな会社が設立される合併のことです。

上述の通り、簡易合併が認められているのは吸収合併における買い手側のみです。

なお、合併については【図解】吸収合併とは?合併後、株主構成や消滅会社はどうなるかの記事で詳しく紹介しています。

簡易合併とは

簡易合併とは

簡易合併とは、存続会社の支払う合併の対価が、存続会社の純資産の5分の1以下となる小型の合併のことです。

簡易合併には、通常の合併と比較して以下2つの特徴があります。

  • 株主総会の特別決議が不要 ※例外あり
  • 反対株主の株式買取請求権が認められていない ※例外あり

簡易合併に該当する場合は、存続会社(買い手)においては株主総会の特別決議は不要ですが、以下に該当する場合は通常の合併と同様、株主総会の特別決議が必要になります。

  1. 存続会社が株式譲渡制限会社であり、合併対価としてその譲渡制限株式を含む場合
  2. 存続会社において、合併差損が生じる場合
    • 承継資産より、承継債務の方が大きい場合
    • 承継資産から承継債務を差し引いた額より、合併対価の方が大きい場合
  3. 一定数の株主が反対する場合

なお、上記3における一定数とは、原則議決権の6分の1ですが、定款で引き下げることも可能です。

そして、簡易合併では、反対株主の株式買取請求権は原則認められていません。

ただし、上記1〜3に該当して株主総会の特別決議が必要となるケースにおいては、反対株主の株式買取請求権が認められます。

2. 簡易分割

続いて、簡易分割についてです。こちらも、まずは会社分割について確認しておきます。

会社分割とは

会社分割とは

会社分割とは、売り手から買い手に対して会社の一部の事業を分割し、譲渡することです。

会社分割における主な関係者は、次の3者です。

  • 分割元の会社(分割会社)
  • 分割元の会社の株主
  • 買い手(承継会社)

会社分割の取引スキームは、誰に事業を分割するのかという観点から新設分割と吸収分割に分類することができます。

新設分割においては、会社分割において新たに設立される会社に事業を譲渡します。

一方、吸収分割においては、買い手自身に事業を譲渡します。

簡易分割が可能なのは、売り手側においては新設分割・吸収分割収の両方で利用できますが、買い手側においては吸収分割のみで利用できます。

なお、会社分割については【図解】会社分割とは?新設分割と吸収分割の違いの記事で詳しく紹介しています。

簡易分割とは

簡易分割とは

簡易分割とは、売り手または買い手にとって一定の規模以下の小型の会社分割のことです。

一定の規模については、売り手と買い手で基準が異なります。

繰り返しになりますが、今一度確認しておきましょう。

  • 売り手(分割会社):会社分割の対象となる資産の簿価が、自身の総資産の5分の1以下であること
  • 買い手(承継会社):会社分割の対価として支払う金額が、自身の純資産の5分の1以下であること

また、簡易分割には、通常の会社分割と比較して以下2つの特徴があります。

  • 株主総会の特別決議が不要 ※買い手は例外あり
  • 反対株主の株式買取請求権が認められていない ※買い手は例外あり

なお、カッコ書きにした例外となる条件は、簡易合併のケースと同様です。

3. 簡易株式交換

続いて、簡易株式交換について検討しましょう。

株式交換とは

株式交換とは

株式交換は、一方の会社が他方の会社を完全子会社化する手法の1つです。

売り手の持っている株式と、買い手の自社株式等を交換するため、株式交換と呼ばれます。

ここで、親会社となる買い手は株式交換完全親会社と呼ばれ、子会社となる会社は株式交換完全子会社と呼ばれます。

株式交換の関係者を整理すると、以下のようになります。

  • 売り手:株式交換完全子会社の株主
  • 取引対象:株式交換完全子会社の株式
  • 買い手:株式交換完全親会社

株式交換の結果、取引対象の株式交換完全子会社は、買い手である株式交換完全親会社の完全子会社となり、元々株式交換完全子会社の株主だった売り手は、株式交換完全親会社等の株主となります。

簡易株式交換とは

簡易株式交換とは

簡易株式交換とは、株式交換完全親会社の支払う合併の対価が、株式交換完全親会社の純資産の5分の1以下となる株式交換のことです。

特徴や例外となる条件は簡易合併のケースとほぼ同様ですが、こちらにも再度まとめておきます。

簡易株式交換には、通常の株式交換と比較して以下2つの特徴があります。

  • 株主総会の特別決議が不要 ※例外あり
  • 反対株主の株式買取請求権が認められていない ※例外あり

簡易株式交換に該当する場合は、株式交換完全親会社(買い手)においては株主総会の特別決議は不要ですが、以下に該当する場合は通常の株式交換と同様、株主総会の特別決議が必要になります。

  1. 株式交換完全親会社が株式譲渡制限会社であり、合併対価としてその譲渡制限株式を含む場合
  2. 株式交換完全親会社において、株式交換差損が生じる場合
  3. 一定数の株主が反対する場合

なお、上記3における一定数とは、原則議決権の6分の1ですが、定款で引き下げることも可能です。

そして、簡易株式交換の場合は反対株主の株式買取請求権は原則認められていません。

ただし、上記1〜3に該当して株主総会の特別決議が必要となるケースにおいては、反対株主の株式買取請求権が認められます。

4. 簡易事業譲渡

最後に、簡易事業譲渡についてです。

なお、簡易事業譲渡は買い手のみに認められている制度のため、正確には簡易事業譲受といいますが、理解の混乱を避けるため、本記事では簡易事業譲渡という言葉を用いて説明します。

事業譲渡とは

事業譲渡とは

事業譲渡とは、売り手から買い手に対し、事業を譲渡することです。

簡易組織再編全般において、簡易組織再編に該当する場合は株主総会決議による承認を省略できますが、通常の事業譲渡においても株主総会の決議が必要となるケースがありますので、整理しておきましょう。

【事業譲渡における株主総会特別決議の要否】

売り手(譲渡会社)買い手(譲受会社)
事業の全部必要必要
重要な事業の一部必要不要
重要でない事業の一部不要不要

なお、重要な事業の一部の基準は、売り手と買い手で違いがあります。

  • 売り手:譲渡資産が自身の総資産額の5分の1を超える価額となる場合
  • 買い手:事業譲渡の対価として支払う金額が、自身の純資産額の5分の1を超える場合

すなわち、今回注目している買い手においては、事業の全部を譲り受ける場合以外は、無条件に株主総会の特別決議が不要となります。

よって、簡易事業譲渡は、事業の全部を譲り受ける場合に、株主総会特別決議が不要となる条件を考えます。

簡易事業譲渡とは

簡易事業譲渡とは

簡易事業譲渡とは、譲受会社の支払う事業譲渡の対価が、譲受会社の純資産の5分の1以下となる小型の事業譲渡のことです。

簡易事業譲渡には、通常の事業譲渡と比較して以下2つの特徴があります。

  • 株主総会の特別決議が不要 ※例外あり
  • 反対株主の株式買取請求権が認められていない ※例外あり

簡易事業譲渡に該当する場合は、譲受会社(買い手)においては株主総会の特別決議は不要ですが、一定数の株主が反対する場合は通常の事業譲渡と同様、株主総会の特別決議が必要になります。

一定数とは、原則議決権の6分の1ですが、定款で引き下げることも可能です。

そして、簡易事業譲渡の場合は反対株主の株式買取請求権は原則認められていません。

ただし、一定数の株主が反対したことによって株主総会の特別決議を経る場合においては、反対株主の株式買取請求権が認められます。

まとめ

さて、今回は簡易組織再編について取り上げました。

適用されるスキームが限定的であること、売り手と買い手で若干条件が違うこと、いくつかの例外があることなどがポイントです。

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