知財金融|概要と活用事例

知財金融|概要と活用事例

知財金融|概要と活用事例

知財金融の概要及び活用事例について、特許庁資料「知財金融のご紹介」を中心に説明します。

また、本記事の概要は、こちらの動画でもご覧頂けます。

知財金融とは

知財金融とは

知財金融とは、特許権などをはじめとする知的財産権や技術・ノウハウなどの「知財」を切り口として、金融機関が会社を評価し、ファイナンスやソリューション提案などを行うものです。IPファイナンスとも呼ばれます。

知財の価値に着目した知財金融は、資金の出し手である金融機関にとって、以下の点から有用です。

  • 事業性評価融資との親和性
    知財金融は、事業性評価融資と親和性があります。事業性評価融資は、金融機関が担保ではなく、会社の事業内容や将来性を評価し、融資を行うものであり、近年積極的に進められています。
    金融機関は、事業性評価融資を行うにあたり、会社の事業内容を評価しますが、会社が有する知財も事業を営む上での経営資源のひとつであり、適切に検討・評価されることが望ましいと言えます。
  • 強みの把握
    知財は、特許や技術・ノウハウなど、事業の競争力の源泉となり得るものです。会社の有する知財を適切に把握することで、事業の強みをより深く理解することができます。
  • 顧客ニーズとソリューション提案
    知財は、会社の知恵と努力によって生み出されたものであり、知財を効果的に活用するためには、新たな設備投資や継続的な研究開発、あるいは外部パートナーとの提携などが必要となるケースがあります。知財を切り口に会社の理解を深めることで、これらの顧客ニーズを把握し、自身のソリューション提案につなげる余地があります。

知財金融促進事業

知財金融促進事業

特許庁は、知財金融促進事業を通じて、中小企業や金融機関による知財金融の実施を推進しています。知財金融推進事業は、2014年度から2021年度までの間に216金融機関によって活用され、総額93億円の融資につながっています。

知財金融促進事業では、主に以下の3つの施策が実施されています。

  • 知財ビジネス評価書
    知財ビジネス評価書は、知財専門家が会社のビジネスの強みについて、知財を中心に分析・評価を行うものです。
  • 知財ビジネス提案書
    知財ビジネス提案書は、知財ビジネス評価書に基づき、会社の強みを活かすための具体的な戦略の検討・提案を行うものです。
  • 金融機関の知財活用高度化
    金融機関に対し、組織的な知財活用の高度化を図るものです。

知財金融の活用事例1. 大光銀行

知財金融の活用事例1. 大光銀行

以下では、知財金融の活用事例について、特許庁資料「知財金融のご紹介」に基づいて説明します。

第1に、大光銀行が、知財金融促進事業を通じて、知財専門家と協働し、建設会社の全国展開を支援した事例です。

  • 背景
    • 建設会社A社は、独自工法に基づき、県内で事業展開。
    • 全国拡大を検討する中、「自社の独自工法の強み」及び「全国展開のための課題」を整理できず、具体的な施策を絞り込めず。
    • 大光銀行も、具体的なソリューション提案を見極められず。
  • 知財金融促進事業による支援内容
    • 知財金融促進事業に基づき、知財専門家が知財ビジネス評価書を作成。
    • A社の独自工法は、技術的な優位性やシェア拡大のポテンシャルが認められる一方、営業力や施工キャパシティがボトルネックとなっていることが判明。
    • 知財ビジネス提案書では、A社が案件の受注主体となり、技術供与した全国のパートナー企業に案件を発注するビジネスモデルを検討・共有。
  • 金融機関によるソリューション
    • A社及び大光銀行の間で、全国展開のための課題はパートナー企業の開拓である旨、共通認識。
    • 大光銀行は、A社に対し、パートナー企業開拓のための営業支援エージェントをマッチング。A社は、当該エージェントと連携し、全国展開を進めていく。

知財金融の活用事例2. 山口銀行

知財金融の活用事例2. 山口銀行

第2に、山口銀行が、知財金融促進事業を通じて、知財専門家と協働し、自動車部品メーカーのアライアンスやブランド戦略を支援する事例です。

  • 背景
    • 自動車部品メーカーB社は、オンリーワンの特許技術やそれに基づく新事業のビジョンを構想。
    • ただし、その技術は専門性が高く、理解が簡単ではなかったものの、山口銀行の担当者はB社宛の経営支援策を日々検討。
  • 知財金融促進事業による支援内容
    • 知財金融促進事業に基づき、知財専門家が知財ビジネス評価書を作成。
    • B社の特許技術は、実際にオンリーワンの技術であり、大手企業も関心を持つものであることが認められた。
    • その上で、当該技術を事業化するためには、B社単独ではなく他社とのアライアンス、及び、B社の技術力についてのブランド戦略が必要である旨、共有。
  • 金融機関によるソリューション
    • 山口銀行は、B社の特許技術に基づく事業化に向け、B社のアライアンス及びブランド戦略を支援。
    • 加えて、知財ビジネス評価書を通じて確立されたB社・山口銀行間での共通認識に基づき、人材紹介やマッチング支援を継続予定。

知財金融の活用事例3. 百五銀行

知財金融の活用事例3. 百五銀行×塗装会社×知財専門家

第3に、百五銀行が、知財金融促進事業を通じて、知財専門家と協働し、塗装会社の顧客開拓を支援する事例です。

  • 背景
    • 塗装会社C社は、社長一人が研究開発を行う中小企業であるが、その技術力は非常に高く、特許も取得。
    • しかし、現在この技術が活用されている業界の収益性が低いため、他業種への技術転用を検討。
    • ただし、その技術は専門性が高く、銀行担当者にとっては理解が簡単ではなく、検討が困難な状況。
  • 知財金融促進事業による支援内容
    • 知財金融促進事業に基づき、知財専門家が知財ビジネス評価書を作成し、C社の特許技術について、技術面の特徴、特許価値、市場などの観点から分析。
    • 結果、C社の特許技術は競争力が高いものであることが確認でき、また新市場へのアプローチ方法についても提示。
  • 金融機関によるソリューション
    • 百五銀行は、C社の特許技術についての理解を深め、新規顧客開拓のために適切なマッチング支援が可能となった。

知財金融の活用事例4. 巣鴨信金

知財金融の活用事例4. 巣鴨信金×食品加工会社×知財専門家

第4に、巣鴨信金が、知財金融促進事業を通じて、知財専門家と協働し、食品加工会社のブランド戦略を支援する事例です。

  • 背景
    • 食品加工会社D社は、「味にとことんこだわる」をモットーに、BtoB市場で一定の地位を確立。
    • 現在、後継者候補への事業承継を推進中だが、知財については専門知識が必要であり、対応できておらず。
  • 知財金融促進事業による支援内容
    • 知財金融促進事業に基づき、知財専門家が知財ビジネス評価書を作成。
    • D社の技術保全やブランド戦略に課題があることが判明。
  • 金融機関によるソリューション
    • 巣鴨信金は、D社の課題である技術保全やブランド戦略を支援。具体的には、技術保全のための専門家の紹介、また、ブランド戦略として製品名の磨き上げやHP刷新のための補助金紹介などで支援を継続。

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