目次
複数回にわたってメザニンファイナンスについて紹介していますが、第3回の今回はバイアウトメザニンです。
バイアウトメザニンとは、M&Aによる買収(バイアウト)の場面で、買い手が買収資金の一部としてメザニンを利用するものです。
なお、過去記事はリンクから飛べますので、最初から確認したい方はこちらからご確認ください。
第1回:【図解】メザニンファイナンスとは?シニア・メザニン・エクイティの違い
第2回:【図解】劣後ローンとは?そのメリットを優先株式と比較しながらわかりやすく解説します
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
メザニンファイナンスとは
メザニンファイナンスは、負債と純資産の間に位置し、ミドルリスク・ミドルリターンの特徴を持つファイナンスのことです。
1階部分にあたる純資産と、2階部分にあたる負債の間にあることから、中二階を意味するメザニンと呼ばれます。
なお、【図解】メザニンファイナンスとは?シニア・メザニン・エクイティの違いで詳しく解説していますので、まずはこちらの記事をご覧ください。
▽関連動画:メザニンファイナンスって??/メザニン(1)【M&Aのプロが解説!】
バイアウトメザニンとは
メザニンファイナンスは、その活用場面によって次の2つに分類できます。
- バイアウトメザニン…M&Aによる買収(バイアウト)の場面で、買い手が買収資金の一部としてメザニンを利用するもの
- コーポレートメザニン…成長資金の調達や資本増強のために、その当事者である会社がメザニンを利用するもの
本記事ではバイアウトメザニンを取り上げ、深堀していきます。
▽関連動画:バイアウトメザニンとコーポレートメザニンって??/メザニン(6)【M&Aのプロが解説!】
バイアウトメザニンの3つの活用場面
バイアウトメザニンが活用される場面として、例えば次の3つが挙げられます。
- ファンドによる買収
- 純粋MBO
- リキャップ
ファンドによる買収と純粋MBOは、先ほど述べたとおり、買収資金の一部としてメザニンを活用するケースです。
リキャップ(リキャピタライゼーション)はやや派生した形です。
▽関連動画:バイアウトメザニンとコーポレートメザニンの5つの活用場面とは??/メザニン(7)【M&Aのプロが解説!】
ファンドによる買収
まず、ファンドによる買収の場面でバイアウトメザニンが活用されるケースについて、その理由や目的について確認していきましょう。
前提として、ファンドがバイアウトメザニンを利用する場合のステップを整理するとこのようになります。
- まず、ファンドがエクイティを拠出する
- シニアレンダーからシニアローンを調達する
- 1,2を合計しても買収資金に不足が生じる場合、メザニンレンダーからメザニンを調達する
かなり割愛していますが、ここではエクイティ→シニアローン→メザニンの順で資金調達を行うという点をおさえていただければOKです◎
そして、ファンドがバイアウトメザニンを活用する主な理由・目的は、次の4つです。
- 投資効率(パフォーマンス)の向上
- 買収資金の確保
- 投資金額(リスク)の限定
- ポートフォリオの分散
上から順に見ていきましょう。
まず、投資効率の観点です。
ファンドは、メザニンを活用することでレバレッジ効果を得ます。
レバレッジ効果とは、買収金額の負担を減らすことで投資効率が改善される効果のことです。
投資効率はざっくり「投資のリターン÷投資した金額」の形で表すことができますから、ファンドの投資した金額を低く抑えることで、投資効率を向上させることができます。
上記ステップ2の時点でシニアローンを調達してファンドの投資負担を減らしていますが、追加でメザニンも調達することで、レバレッジ効果をさらに享受することができます。
次に、買収資金の確保についてです。
そもそもエクイティやシニアローンだけでは買収資金が不足する場合、追加でメザニンを調達することで、そのディールに必要な買収資金を確保することができます。
さらにリスクを限定するという観点からも、メザニンを活用するメリットがあります。
投資効率のところで確認したとおり、メザニンを利用することで買い手であるファンドは投資金額を低く抑えることができます。
これにどのようなメリットがあるのかというと、例えば投資が失敗してしまった場合でも、損失額は投資した金額に限定することができます。
投資の失敗というのは、例えば投資後に業績が悪化してファンドの回収金額が投資金額を下回ってしまった場合などです。
より極端なケースでは、投資先が倒産してしまい、ファンドの投資金額が全く回収できない場合もあります。
また、ファンドは複数の案件に対して投資を行い、ポートフォリオを組んでいます。
メザニンを利用して1つ1つの案件に対する投資金額を限定することでより多くの案件に投資することができ、リスクの分散を図ることができます。
▽関連動画:バイアウトメザニン(1)ファンドがメザニンを活用する理由【M&Aのプロが解説!】
純粋MBO(マネジメントバイアウト)
では次に、純粋MBOの場面でバイアウトメザニンが活用されるケースについてです。
純粋MBOとは、MBO(マネジメントバイアウト)の一種で、買い手となる経営陣が議決権の大半を取得するMBOのことです。
MBOについてはMBO(1)マネジメントバイアウトとは??から複数回にわたり丁寧に解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
さて、そんな純粋MBOにおいて、バイアウトメザニンを利用する主な理由・目的は次の2つです。
- 買収資金の不足分の調達
- 議決権のない資金の調達
MBOを実施するにあたり、買収資金は自己資金もしくは金融機関からのローンが原資となりますが、それだけでは買収に必要な金額に不足するケースもあります。
その時に登場するのがメザニンです。
メザニンで買収資金の不足分を補い、MBOを実施することができます。
なお、この不足分を調達するにあたり、ファンドから調達することも可能です。
しかし、バイアウトファンドが関与する場合、通常、議決権の多数をファンドが取得します。(ただし、無議決権優先株式による出資とするなど、回避する手段もあります)
そうすると、経営陣が議決権の多数を取得したいという純粋MBOのそもそもの目的が果たせなくなってしまいます。
このため、ファンドによる出資ではなく、メザニンの方がより好まれるということです。
▽関連動画:純粋MBOとは??ファンドMBOとの比較で考える【M&Aのプロが解説!】
▽関連動画:バイアウトメザニン(2)純粋MBOでメザニンを活用する理由【M&Aのプロが解説!】
リキャップ
最後に、リキャップ(リキャピタライゼーション)についてです。
冒頭、リキャップはやや派生した形だといいました。
それは、M&Aによる買収の場面ではなく、買収から一定期間が経過した後のタイミングで活用されるからです。
買収から一定期間経過後、買い手であるエクイティスポンサーが、自身が拠出した買収資金の一部を回収するべく、メザニンを活用するものです。
この点についても動画にわかりやすくまとまっていますので、ぜひ動画でご確認ください。
▽関連動画:バイアウトメザニン(3)リキャップでメザニンを活用する理由【M&Aのプロが解説!】
まとめ
さて、今回はバイアウトメザニンについて詳しくご紹介しました。
次回は、メザニンを活用場面によって2つに分けたうちのもう1つ、コーポレートメザニンについて取り上げます。