目次
本シリーズでは、地方銀行各行のDX戦略について、分析・解説します。
第1回目の千葉銀行、第2回目の横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)に続き、第3回目は、京都銀行のDX戦略についてです。
《執筆者》
曽我 義光/株式会社マーブル 取締役
ソフトウェア開発エンジニアを経て、外資系証券会社の不動産ファンド部門にてソフトウェア開発責任者として開発全体を統括。その後、投資ファンド運営会社でIT部門の責任者を担当し、情報分析サービスのシステム開発PM業務に従事。2020年株式会社マーブルに参画。
DX戦略の方針
本記事では、京都銀行の2020年3月の中期経営計画、及び2021年5月の機関投資家向けインフォメーションミーティング資料から、京都銀行のDX戦略にフォーカスして整理します。
これらの資料によると、京都銀行のDX戦略の方針は、次のようにまとめられます。
- DX戦略の基本方針:「デジタルコネクト」すべてのお客様とデジタルでつながる
- 営業推進(収益機会拡大)
- 法人ポータル
- 個人向けアプリ
- コンサルティングの付加価値向上
- 生産性革新(コスト削減)
- 事務手続のデジタル化
- 人的リソースのコンサルティング営業への投入
- 営業推進(収益機会拡大)
すなわち、デジタルサービスを推進しつつも、対面サービスも深化させることで、デジタルとリアルのベストミックスを目指すものとのことです。
DX施策のマッピング
本シリーズでは、各行のDX戦略の具体的施策(DX施策)の位置付けについて、こちらの軸に沿って整理しています。
- 縦軸:PLへの影響
DX施策の目的や効果について、「売上高の増加」「コストの削減」「その両方」というPL面における定量的な軸に沿って整理。 - 横軸:ターゲット
DX施策のターゲットについて、「顧客」「銀行(自行)」「その両方」という定性的な軸に沿って整理。
これらの軸に沿って、京都銀行のDX施策を整理したものがこちらになります。
これらのDX施策の内、重要度が高いと思われるものをピックアップして説明します。なお、本記事で取り上げていない施策については、前述の中期経営計画、及び機関投資家向けインフォメーションミーティング資料にて詳細をご確認ください。
- アプリ・法人ポータル
- 概要:
個人向けには京銀アプリ、法人向けには京銀ビジネスポータル(京銀Big Advance)により、顧客接点のプラットフォーム化を図っています。
これらのアプリ・法人ポータルを通じて、口座開設や決済サービスといったバンキング機能(事務手続)のみならず、資産運用やビジネスマッチングなどのコンサルティングにも展開していき、個人・法人の顧客とつながる(コネクト)する見取り図が描かれています。
また、これらのチャネルのデジタルサービスの機能充実により、法人向けには総合ソリューション事業に、個人向けには総合生活サービスに発展していくことを見据えています。 - 売上高増加:
アプリや法人ポータルを通じたデータの収集・蓄積及び分析に基づくコンサルティングの付加価値向上により、売上高の増加につながるものと考えられます。 - コスト削減:
事務手続のデジタル化や店舗来店の減少により、業務時間の削減や店舗人員の減少などのコスト削減が図れるものと考えられます。
- 概要:
- 従来型事務の解消
- 概要:
「従来型事務のない銀行」を志向し、以下のようなデジタル活用に取り組んでいます。
・事務手続の自動化・タブレット化・本部集中化
・対話型AIチャットボットの導入
また、デジタルを活用することで、事務処理の構成を次のように転換していく計画です。
・従来型事務:80%→20%
・タブレット:10%→30%
・非対面(アプリ・リモート事務・本部集中):10%→50% - コスト削減:
従来型事務のデジタル化が進めば、業務効率化によるコスト削減が実現できるものと想定されます。
- 概要:
まとめ:DX戦略の全体像
最後にまとめです。本記事では、京都銀行のDX戦略の目的及び具体的なDX施策について整理しました。DX戦略の全体像は、上図の通り整理できます。