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デューディリジェンスとは、M&Aの買い手が、売り手や対象会社に対して実施する調査のことを意味します。
労力のかかるプロセスではありますが、実際にやるべきことを1つ1つ検討してみると、意外とシンプルです。
デューディリジェンスを各ステップに分解して、それぞれ整理してみましょう。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
デューディリジェンスとは
デューディリジェンスとは、M&Aの買い手が、売り手や対象会社に対して実施する調査のことです。
日本語では買収監査、英語ではDue diligenceといいます。
実務上はデューディリやデューデリ、DD(ディーディー)などと略して呼ばれることが多いです。
ここで、M&Aの全体の流れにおけるデューディリジェンスの位置付けを整理しておきましょう。
M&Aは、次のような流れで実施されます。
- 準備
- 打診
- 初期検討
- 基本合意
- デューディリジェンス
- 最終契約
- 取引実行
デューディリジェンスは、基本合意を結んだ後、売り手や対象会社を精査し、最終的な判断をすることを目的に実施します。
精査するポイントとしては、
- 本当にこの会社を買収していいのか?
- 買収価格は妥当か?取引条件に反映させるべきことはないか?
- 買収前に対応すべきことはあるか?(プレクロ事項)
- 買収後に対応すべきことはあるか?(ポスクロ事項)
などです。
小規模なM&Aでは簡易的なデューディリジェンスで済ませてしまうケースもありますが、それでも相応の労力やコストがかかります。
また、売り手にとっても資料の提出や質問への回答など、相当の負担が生じます。
すなわち、デューディリジェンスは売り手と買い手の両者の協力が不可欠な作業となります。
そのため、基本合意の段階で独占交渉期間やデューディリジェンスへの協力について規定することで、デューディリジェンスの実効性を確保するのがベターです。
▽関連動画:M&Aの流れ(1)取引の全体像は??【M&Aのプロが解説!】
デューディリジェンスの進め方
デューディリジェンスの方法について、8つのステップに分解して順に確認していきましょう。
- DD専門家の選定
- 依頼資料・Q&Aリストの作成・提出
- (売り手側)資料の準備
- 資料受領・検討
- 経営陣面談
- (売り手側)Q&Aへの回答
- Q&Aの提出
- DD報告書の受領
1. DD専門家の選定
買い手は、デューディリジェンスを実施するために専門家を選定するのが一般的です。
なお、デューディリジェンスには、その分野によって主に3つの種類が存在します。
そして、それぞれの分野における専門家は以下の通りです。
- 法務DD:弁護士
- 財務税務DD:公認会計士、税理士
- ビジネスDD:買い手自身、コンサルティング会社
各DD専門家とは、必要に応じてそれぞれ契約を締結します。
2.依頼資料・Q&Aリストの作成・提出
さて、DD専門家が決まったら、次は売り手に依頼する資料とQ&Aのリストを作成します。
ここで、どのような項目をリストアップすべきかというのが一番悩ましい点ではないでしょうか。
主な項目を挙げると、
- 決算書
- 税務申告書
- 株主名簿
- 定款
- 取締役会議事録
- 商品別の売上高・利益がわかる資料
- 事業計画
- 設備投資
- 月次試算表
などはリストアップしておくと良いでしょう。
なお、法務・財務税務DDを実施する場合は、DD専門家がこれらの基本的な資料についてリストアップします。
買い手となる方は、ご自身が分析したいテーマについての資料・Q&Aをリクエストすることになります。
なお、複数のDD専門家に依頼する場合は、共通のフォーマットを使うことを事前にすり合わせておくのをオススメします。完了/未了の管理が簡単になりますし、売り手の負担も軽減できます。
また、依頼資料・Q&Aリストは、開示資料リストやインフォメーションリクエストシートなどと呼ばれることもあります。
3.(売り手側)資料の準備
依頼資料・Q&Aリストができたら売り手側に提示し、資料の開示を待ちます。
決算書や税務申告書などすでに揃っている書類であれば良いのですが、中には売り手側で管理されておらず、別途資料の作成が必要になるケースもあります。
そのような場合、売り手がデータを整理して資料を作成する場合もあれば、元データの一部を抽出したものを提出することも考えられます。
このあたりは、売り手買い手双方の意向を踏まえ、現実的な対応について協力的に検討することとなります。
4.資料受領・検討
売り手から資料を開示されたら、その内容を検討します。
資料を確認すると、追加の質問事項やさらなる依頼資料などが出てくるため、それらを先述の依頼資料・Q&Aリストに追加し、適宜やりとりします。
5.経営陣面談
デューディリジェンスの過程で、対象会社の経営陣に対する面談を実施します。
マネジメントインタビュー、略してマネインなどとも呼ばれます。
買い手は、この面談で買収しようとしている会社についての理解を深めます。
このマネジメントインタビューを通じて、現経営陣が考えている経営上の課題や問題意識について認識することが大事です。
加えて、会社を買収した後の経営体制についても検討しましょう。
また、マネジメントインタビューとは別途、経理や法務を担当している実務メンバーとも個別にQ&Aセッションを行う場合もあります。
上記Q&Aが溜まっている場合は、このセッションを通じて効率的に回答を得るのも良いでしょう。
6.(売り手側)Q&Aへの回答 & 7.Q&Aの提出
さて、DDの初期段階からやりとりを続けているQ&Aですが、マネジメントインタビューやQ&Aセッションの内容を踏まえ、追加の質問事項がおそらく出てきます。
取引実行前のこの段階で、できる限り懸念事項を解消しましょう。
ただし、繰り返しになりますが、デューディリジェンスは売り手にも相当の負担がかかります。
お互い大変な場面ではありますが、礼儀やマナーをもって対応することがM&A成功の秘訣です。
8.DD報告書の受領
売り手から開示された資料の検討や幾度となく繰り返されたQ&Aのやりとり、マネジメントインタビューを経て、DD専門家はDD報告書を作成し、買い手に提出します。
DD報告書はDDレポートとも呼ばれ、デューディリジェンスを通じて確認された検出事項やその取引条件(買収価格)への影響、対応策などについてまとめた報告書です。
DD報告書の内容を踏まえ、買い手は株式譲渡や事業譲渡などのM&Aスキームや、価格などの取引条件について再検討した上で、最終交渉や条件提示に臨ことになります。
▽関連動画:M&Aの流れ#7|買収監査(DD)【前編】
▽関連動画:M&Aの流れ#8|買収監査(DD)【後編】
まとめ
さて、今回はデューディリジェンスのプロセスについてご紹介しました。
M&Aは買収対象となる会社の状態なども重要ですが、結局は人と人との交渉によって決まります。
様々な案件を見ていると、やはり礼儀やマナーをもって対応することがM&A成功の秘訣だと感じます。