目次
テクノロジーの進化により決済機能などの金融サービスを搭載したアプリが多く存在します。その仕組みを提供しているのがBaaS(バース)です。BaaSの導入により、銀行以外の事業者は自社のアプリに手軽に金融サービスを追加して提供することを可能としています。
昨今注目されているBaaSにつき、その概要、BaaSを支えるテクノロジー、取り巻く各プレーヤーのメリットを解説していきます。
《執筆者》
曽我 義光/株式会社マーブル 取締役
ソフトウェア開発エンジニアを経て、外資系証券会社の不動産ファンド部門にてソフトウェア開発責任者として開発全体を統括。その後、投資ファンド運営会社でIT部門の責任者を担当し、情報分析サービスのシステム開発PM業務に従事。2020年株式会社マーブルに参画。
BaaSの概要
BaaSとは、非金融事業者が金融サービスをユーザーに提供できる仕組みのことを言います。「金融サービスのオープン化」とも言うことができます。それぞれの用語の定義は、以下の通りです。
非金融事業者: 小売、飲食、旅行、教育など
金融サービス: 決済、送金、融資、投資、保険など
ユーザー : 一般消費者
デジタル化が進む中、テクノロジーを活用した異業種間の連携が加速しています。金融業界においても「金融サービスのオープン化」が進み、BaaSを活用することで他業種の事業者が金融サービスを簡単に利用することが可能となっています。
BaaSを支えているのが、APIというテクノロジーです。APIにつき検討していきましょう。
APIとは
APIとは、Application Programming Interfaceの略で、自社サービスの機能を一部公開し他のサービスでも利用可能な状態とすることです。
APIを利用することで、それまで独立していたそれぞれのサービスがシームレスに連携し、あたかも1つのサービスとして提供することができるようになります。
例えば、APIを利用しないとなると、モノを購入し決済などの金融サービスを利用するには銀行のアプリにログインして処理をする必要があります。これをAPIを利用することにより、モノを購入しそのアプリ内で決済処理を完結できます。
APIにより、金融サービスをシームレスに利用できるのが大きな特徴です。決済以外にも送金、融資、投資、保険のサービスなど多岐に渡って提供されています。
APIによる「金融サービスのオープン化」には、様々なメリットがあります。金融サービスを提供する銀行、自社サービスを展開する非金融事業者、アプリ利用をするユーザーそれぞれにとってのメリットにつき、検討していきましょう。
銀行にとってのメリット
金融サービスの機能を公開し他社サービスに搭載してもらうことのメリットとして、次の2つが挙げられます。
- 異業種とのビジネス創造
- 新サービス立ち上げスピードの向上
以下、各項目につき説明します。
異業種とのビジネス創造
他社サービスと積極的に連携することで、異業種と新しいサービスを創造し、ビジネスチャンスの拡大を図ることができます。これにより、これまでリーチできていなかった顧客層へのアプローチが可能となり、銀行にとっての新たな収益源となります。
新サービス立ち上げスピードの向上
従来のサービス連携では、他社サービスへの機能搭載には莫大なコストと時間を要していました。BaaSの登場により、銀行側では金融サービスを公開するだけで、サービスの搭載は相手側の役割となり、新サービスの立ち上げスピードは格段に向上しました。
非金融事業者にとってのメリット
非金融事業者にとって、金融サービスを利用できることのメリットとして、次の2つが挙げられます。
- 金融サービスの提供
- データ活用の高度化
以下、各項目につき説明します。
金融サービスの提供
非金融事業者が自社のサービスに金融サービスを独自に搭載するとなると、自社で銀行のライセンスを取得する必要がありましたが、BaaSを利用すれば自社でライセンスを取得する必要はありません。
これにより、非金融事業者による金融サービス利用のハードルが下がったと言えます。
データ活用の高度化
これまでは、マーケティングにおいて自社サービス利用時のデータを活用していました。これに加えて、金融サービス利用時のデータも活用することが可能となります。非金融データと金融データを組み合わせることで高度なデータ分析が可能となり、より詳細にユーザーニーズの把握を導き出すことができます。
ユーザーにとってのメリット
ユーザーにとってのサービス利用におけるメリットは、次の通りです。
- 顧客体験の向上(顧客の利便性の向上)
以下、上記項目につき説明します。
顧客体験の向上(顧客の利便性の向上)
非金融サービスと金融サービスをシームレスに操作できることは、ユーザーにとって使い勝手の良いアプリと言えます。決済の度にログインを求められるのはユーザーにとってストレスとなります。BaaSの利用により、このストレスを解消し快適な顧客体験を実現しています。
BaaSの事例紹介
アプリを通じて、こんなシーンでBaaSは活用されています。
- 買い物をしながらローンの申し込み
- 飲み会後の精算で友達に送金
- 旅行代金をグループで積立
- クレジットカードがなくてもプリペイドカードを発行してプリペイドで決済
- 銀行口座を持たなくてもスマホのアプリからATMで出金
これらは一例に過ぎませんが、BaaSの活用により非金融サービスと金融サービスはシームレスに連携し、さらに便利な世の中になっていきます。
まとめ
以上、本記事ではBaaSにつき検討してきました。
主なポイントをまとめると、以下の通りです。
- BaaSとは
- 非金融事業者が金融サービスをユーザーに提供できる仕組みのこと
- 「金融サービスのオープン化」とも言える
- BaaSを支えるテクノロジーがAPI
- APIとは
- 自社サービスの機能を一部公開し、他のサービスでも利用可能な状態とすること
- 独立していたそれぞれのサービスがシームレスな連携が可能となる
- 銀行にとってのメリット
- 異業種とのビジネス創造
- 新サービス立ち上げスピードの向上
- 非金融事業者にとってのメリット
- 金融サービスの提供
- データ活用の高度化
- ユーザーにとってのメリット
- 顧客体験の向上(顧客の利便性の向上)