目次
本記事では、バイアウトファンドの4つの特徴について取り上げます。
また、バイアウトファンドの活用場面や、PEファンドとの位置付けについても整理します。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
バイアウトファンドとは
バイアウトファンドとは、
- 投資家から資金を集め、
- エクイティ性資金を拠出して株式や事業を取得し、
- 経営権を確保して企業価値向上に努め、
- 最終的に株式や事業を売却し、利益の獲得を目指す
ファンドのことを指します。
より端的に言うと、会社を買い、企業価値を高め、その会社を売却して利益を得るというのがバイアウトファンドのビジネスです。
バイアウトファンドの4つの特徴
バイアウトファンドの主な特徴として、本記事では次の4つの観点から掘り下げます。
- リスクマネーを供給する
- 経営権を確保する
- 企業価値を向上させる
- 投資期間が限定されている
それぞれの観点について、詳しく見ていきましょう。
1. リスクマネーを供給する
バイアウトファンドは、エクイティを拠出することで、株式や事業を取得します。
シニアやメザニンに比べ、よりリスクの高いエクイティの出し手として、市場にリスクマネーを供給します。
また、そのハイリスクに見合った高いリターンを追求するのも、バイアウトファンドの特徴です。
2. 経営権を確保する
通常、バイアウトファンドは株式の多数を取得し、経営権を確保します。
経営権を確保することで、従来の経営方針に捉われることなく、新たな視点で投資先の経営改善に努めます。
また、バイアウトファンドに所属している経営支援メンバーが会社の経営に関与することにより、ハンズオンで会社の経営支援を行うことが一般的です。
3. 企業価値を向上させる
バイアウトファンドのリターンは、企業価値の向上を通じて実現されます。
このため、バイアウトファンドは、買収直後の統合作業であるPMIから中長期的な成長施策であるバリューアップまで、あらゆる策を講じて買収先の企業価値の向上を図ります。
4. 投資期間が限定されている
バイアウトファンドの利益は、企業価値の向上を実現した買収先を、次の買い手に売却することで実現されます。
すなわち、バイアウトファンドによるM&Aは、将来的な売却を見据えて実施されます。
このため、バイアウトファンドによる買収、すなわち投資は、通常は5年前後などの一定の期間に限定されます。
バイアウトファンドの7つの活用場面
では、バイアウトファンドは上記4つの特徴を活かして、どのような場面で登場するのでしょうか。
バイアウトファンドのビジネスは、まずは会社や事業を買収することから始まります。
買収を別の言葉で表すと、「M&A」。
すなわち、バイアウトファンドは広い意味でのM&Aでの場面で登場することとなりますが、より細かい区分として、以下7つが挙げられます。
- MBO
- カーブアウト
- 事業承継
- 成長支援
- 非公開化
- 事業再生
- 業界再編
それぞれにつき、簡単に概要を説明します。
1. MBO
第1に、MBOの場面です。
MBOとは、マネジメントバイアウト(Management Buyout)の略称で、経営陣による企業買収・事業買収を意味します。
MBOはM&Aの一種ですが、会社や事業の買い手が経営陣だということが特徴です。
すなわち、会社の経営陣が既存株主から株式を取得し、所有と経営の一致を図るM&Aのことです。
MBOの場合、経営陣を資金面や経営面からサポートすべく、バイアウトファンドが関与するケースがあります。
この場合、バイアウトファンドは経営陣と協働し、経営陣とともに既存株主から会社の株式を取得します。
その後、会社に対し経営支援を行うことにより、企業価値の向上に努めます。
2. カーブアウト
第2に、カーブアウトの場面です。
大手企業が、事業の一部や子会社をノンコア部門として売却するカーブアウトの場合、バイアウトファンドは買い手としてその子会社や事業を買収します。
3. 事業承継
第3に、事業承継の場面です。
後継者がいないオーナー企業などの場合、会社の継ぎ手としてバイアウトファンドが登場し、バイアウトファンドによる事業承継として、会社を買収します。
なお、近年後継者不足を背景に、バイアウトファンドによる事業承継の事例が多く見られます。
4. 成長支援
4つ目は、成長支援の場面です。
会社の成長が滞っている場合、バイアウトファンドからの出資を受け入れることにより、会社のさらなる成長を企図するケースもあります。
この場合、バイアウトファンドは資金だけではなく経営メンバーなどの人材も派遣することにより、ヒト・カネの両面から経営支援を実施します。
5. 非公開化
5つ目は、非公開化の場面です。
近年、上場会社の経営陣が、長期的視点での経営や敵対的株主への対応、上場維持コストの削減などを目的として、非公開化を図るケースが増えています。
なお、非公開化が経営陣主導で為される場合は、前述のMBOの一種となります。
このような非公開化の場面でも、バイアウトファンドが経営陣と協働し、資金面をサポートすることで、非公開化を実現することができます。
6. 事業再生
6つ目は、事業再生の場面です。
業績が悪化し、再生局面に陥っている企業に対し、バイアウトファンドがリスクマネーを供給し、会社を支えるケースもあります。
なお、事業再生局面におけるバイアウトファンドの役割としては、リスクマネーの供給や経営メンバーの派遣に留まりません。
会社が負担する過大債務について、その対応策を金融機関と交渉することも、バイアウトファンドの重要な役割として期待されています。
7. 業界再編
最後の7つ目は、業界再編の場面です。
ある会社が業界再編を主導したいと考えている場合、M&Aのノウハウを有するバイアウトファンドと組むことで、より効率的に業界再編を実現できる余地があります。
また、バイアウトファンド自身が業界再編を主導するケースもあります。
例えば、ある特定のセクターに強みを持つバイアウトファンドの場合、自身が有する業界知見を活かし、同業界における再編を主導することが考えられます。
以上が、バイアウトファンドの7つの活用場面の概要です。
バイアウトファンドとPEファンド
バイアウトファンドと同様に、PEファンド(プライベートエクイティファンド)という言葉も聞いたことがあると思います。
PEファンドという言葉は、主に次の2つの使い方をされています。
- 広義のPEファンド…非上場株式に投資するファンド(バイアウトファンド含む)
- 狭義のPEファンド…バイアウトファンド
広義のPEファンド
バイアウトファンドのように、非上場株式に投資するファンドのことを広い意味でのプライベートエクイティファンド、略してPEファンドと言います。
バイアウトファンドの他にも、ベンチャーキャピタルや企業再生ファンドなども含まれます。
なお、これらは投資する企業の成長段階に即して整理することができます。
- ベンチャーキャピタル…創業期の企業に投資
- バイアウトファンド…成長期・成熟期の企業に投資
- 企業再生ファンド…衰退期・最盛期の企業に投資
また、これらのファンドが投資先企業の議決権をどの程度保有するかというと、ベンチャーキャピタルは少数株式、バイアウトファンドと企業再生ファンドは多数株式を取得するのが一般的です。
狭義のPEファンド
上記の通り、広義のPEファンドにはベンチャーキャピタルや企業再生ファンドも含まれますが、M&Aの業界で「PEファンド」と言う場合、バイアウトファンドを指すのが一般的です。
まとめ
さて、今回はバイアウトファンドの特徴について取り上げました。
ファンドについては他にもいくつか記事を書いていますので、興味のある方はぜひあわせてご覧ください。
また、M&Aを検討されている方は、PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフがサポートしますので、お気軽にご相談ください。