目次
今回は、メザニンレンダーの立場でメザニンの仕組みを考えてみようと思います。
メザニンレンダーはどのように収益を得ているのか、メザニンを取り巻く関係者はどのような思惑を持ってどのように行動するのか、等について考えます。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
メザニンファイナンスとは
メザニンファイナンスは、負債と純資産の間に位置し、ミドルリスク・ミドルリターンの特徴を持つファイナンスのことです。
1階部分にあたる純資産と、2階部分にあたる負債の間にあることから、中二階を意味するメザニンと呼ばれます。
なお、【図解】メザニンファイナンスとは?シニア・メザニン・エクイティの違いで詳しく解説していますので、まずはこちらの記事をご覧ください。
▽関連動画:メザニンファイナンスって??/メザニン(1)【M&Aのプロが解説!】
メザニンレンダーが受け取る4つのリターン
メザニンレンダーは、劣後ローンや優先株式を通じて資金を提供します。
資金を提供した以上、何らかの形でリターンを回収することになります。
メザニンレンダーは、次の4つの手法を組み合わせることによってリターンを確保します。
- アップフロントフィー(投資実行時)
- キャッシュ(投資期間中)
- PIK(回収時)
- エクイティキッカー(回収時)
カッコ書きしたのは、それぞれのリターンを得るタイミングです。
アップフロントフィーは組成手数料とも呼ばれます。
その名の通り、メザニンの提供時(組成時)にメザニンレンダーが受領するリターンです。
通常、「メザニンの提供金額の●%」という形で設定されます。
キャッシュ(現金利息・配当)は、投資期間中、定期的に現金で受領するリターンのことです。
銀行預金の利子や、株の配当のイメージです。
メザニンレンダーにとっては投資期間中にリターンの一部を回収できるため、リスク軽減につながります。
このためメザニンレンダーは、後述のPIKに比べ、キャッシュを選好する傾向があります。
PIK(繰延利息・配当。Payment In Kindの略で、ピックと読む)とは、メザニン投資が完了したタイミングで受領するリターンのことです。
メザニン投資が完了するのは、その期限が到来したときや、回収・リファイナンスによって返済・償還されたときです。
PIKのイメージとしては、投資期間中に発生している金利や配当の一部を、回収時に一括で受け取るというものです。
PIKの場合、メザニン投資期間中の投資先の会社からの資金流出が、キャッシュを利用した場合に比べ少なくなります。
よって、エクイティスポンサー・シニアレンダー・投資先の会社にとっては、メザニンレンダーにキャッシュよりもPIKの割合を多くしてもらった方が良いといえます。
エクイティキッカーとは、メザニンレンダーに付与される新株予約権のことです。
エクイティスポンサーのExitが新規上場やM&Aによる第三者への売却による場合、メザニンレンダーはエクイティキッカーを行使し、リターンを増加させることができます。
ただし、エクイティキッカーはエクイティスポンサーの利益の一部を犠牲にしますので、最近はあまり設定されていないようです。
▽関連動画:メザニンレンダーが得る4つのリターン【アップフロント・キャッシュ・PIK・エクイティキッカー】
メザニンのリターン水準と組み合わせ
メザニンレンダーが得るリターンはマーケットの環境によって増減しますが、全体でIRR(内部収益率)8〜15%程度に設定されるのが一般的です。
また、先ほど挙げた4つのリターンのうち、その中心はキャッシュとPIKの2つです。
例えば、キャッシュとPIKだけで構成される場合で12%のリターンを目標とするなら、「キャッシュで6%、PIKで6%」あるいは「キャッシュで4%、PIKで8%」など、合計で12%のリターンを得られるよう、キャッシュとPIKを組み合わせます。
ただし、メザニンレンダーの一存でその組み合わせを決められるわけではありません。
メザニンレンダーの他にも、エクイティスポンサーやシニアレンダー、投資先の会社など、それぞれの立場によって優先させたいことが異なります。
上述の通り、メザニンレンダーはキャッシュを、それ以外の3者はPIKを優先したいと考えています。
つまり、「メザニンレンダー vs その他関係者」という構図になることが多く、双方の交渉によってその組み合わせは決定されます。
それぞれの立場の思惑についてもう少し詳しくご説明します。
メザニンレンダー
メザニンレンダーは、キャッシュを選好します。
資金を出資する立場としては、早期に回収できる方が良いからです。
よって、投資完了時に一括で受け取るPIKではなく、投資期間中定期的に受け取ることができるキャッシュを好みます。
シニアレンダー
シニアレンダーは、PIKを選好します。
PIKは、シニアローン回収後にメザニンレンダーへ資金が移動します。
一方キャッシュは、投資期間中に投資先の会社からメザニンレンダーへ資金が流出していることになります。
つまり、シニアローンの回収や債権保全の観点から、シニアレンダーにとってはPIKの方がメリットがあるのです。
よって、シニアレンダーはメザニンレンダーに対して、キャッシュよりもPIKを多くするように要請するのが一般的です。
エクイティスポンサー・投資先の会社
エクイティスポンサーと投資先の会社も、PIKを選好します。
投資期間中、じわじわと流れ出ていくキャッシュは、会社の資金繰りや設備投資に悪影響を及ぼします。
よって、投資期間中はできるだけメザニンレンダーへの資金流出を限定したいと考えます。
このため、シニアレンダーと同様、メザニンレンダーに対してキャッシュよりもPIKを要請するのが一般的です。
▽関連動画:【メザニンのリターン】キャッシュとPIKの決め方
まとめ
さて、今回はメザニンレンダーがどのようにリターンを得ているのかについてご紹介しました。