目次
少数株主をなんとかしたい。そんなニーズはありませんか?
- 親族に分散している株式を買い集めたい。
- かつてお世話になったが、現在疎遠になっている株主の株式を買い取りたい。
- 自社に敵対的な株主がいて、何かしら対処したい。
このような場合、スクイーズアウト(少数株主排除)が選択肢として考えられます。
スクイーズアウト(少数株主排除)とは、多数株主が少数株主の株式を強制的に取得し、株式所有100%を実現する手法のことです。
今回は、スクイーズアウト(少数株主排除)の概要やメリット、手法につき、ポイントを整理していきます。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
スクイーズアウト(少数株主排除)とは
多数株主が少数株主を排除し、株式の100%を取得するスクイーズアウト(少数株主排除)につき、検討していきます。
今回は、上図にある通り、以下のテーマに沿って検討していきます。
- スクイーズアウトの概要
- スクイーズアウトの活用場面
- スクイーズアウトのメリット
- スクイーズアウトの手法
スクイーズアウト(少数株主排除)の概要
そもそもスクイーズアウト(少数株主排除)とは、「多数株主が、少数株主を排除して、100%株主となること」を指します。
言葉だけだとイメージが湧きにくいため、具体例で考えていきましょう。
まず、株主構成として、多数株主と少数株主が存在しているとします。ここで、多数株主が何かしらの理由で株式の100%を保有したいと考えたとします。この場合、一定の方法により、少数株主の保有する株式につき、多数株主が強制的に取得し、多数株主が少数株主に対し、株式の対価を支払うことで、多数株主が株式の100%を取得することができます。この一連の流れ・手法のことを、スクイーズアウト(少数株主排除)といいます。
ここで、上記のスクイーズアウトのポイントを整理すると、以下の通りです。
- 「①多数株主」が
- 「②少数株主の保有する株式」につき、
- 「③少数株主の承諾を得ることなく、強制的」に、
- 「④金銭などを対価に取得」すること
以上が、スクイーズアウト(少数株主排除)の概要です。
スクイーズアウトの活用場面
続いて、スクイーズアウトの活用場面についてです。
スクイーズアウトの活用場面は、大きく2つに分けられます。
- 既存の多数株主による株式集約(100%化)
- M&Aの買い手による株式集約(100%化)(いわゆる2段階買収)
以下、個別に見ていきましょう。
既存の多数株主による株式集約(100%化)
まず、既存の多数株主による株式集約(100%化)です。
こちらは、従来より多数株主と少数株主がいる状態において、多数株主が100%化のためにスクイーズアウトを実施するものです。
具体的な活用場面として、事業承継に伴う株式集約や親会社による子会社の完全子会社化が挙げられます。
例えば、株式が分散している会社の事業承継に際し、後継者が株式の集約を図ったとします。
しかし、一部の少数株主が株式の売却に応じなかったとします。
この場合、スクイーズアウトを利用して、株式の集約を実現することが考えられます。
同様に、親会社が子会社の完全子会社化を図ったとします。
その際、一部の少数株主が株式の売却に応じなかったとします。
このような場合、スクイーズアウトを利用し、完全子会社化を実現することが考えられます。
M&Aの買い手による株式集約(100%化)
次に、M&Aの買い手がスクイーズアウトを利用する場面につき検討します。
M&Aにおいてスクイーズアウトが利用される場合のことを、一般的に2段階買収といいます。
ここで言う第1段階と第2段階は、以下の通りです。
- 第1段階:M&Aの買い手による多数株式の取得
- 第2段階:M&Aの買い手によるスクイーズアウトを通じた100%化
すなわち、M&Aの場面においては、第1段階で買い手が多数株式を取得し、その後の第2段階としてスクイーズアウトが実施され、100%化が実現されます。
補足:TOB(株式公開買付)とスクイーズアウト
2段階買収に関連し、TOB(株式公開買付)とスクイーズアウトの関係について補足します。
2段階買収は、TOB(株式公開買付)による非公開化の場面でよく用いられます。
上場会社を買収し非公開化する場合、TOB(株式公開買付)が行われ、株式市場で一定数(通常は3分の2以上)の株式の取得を目指します。
TOB(株式公開買付)の結果として一定数(通常は3分の2以上)の株式を取得した場合、TOB(株式公開買付)に申し込まれなかった残りの株式については、スクイーズアウトを通じて買い手が強制的に取得し、100%化を図るのが一般的です。
通常、スクイーズアウトの手法としては、買い手が90%以上を取得した場合は特別支配株主による株式等売渡請求、買い手が3分の2以上90%未満の取得に留まる場合は、株式併合が用いられます。
スクイーズアウトのメリット(スクイーズアウトの目的・理由)
次に、スクイーズアウトのメリットにつき検討します。
すなわち、スクイーズアウトの実施主体となる多数株主は、何を目的に/どういった理由で、スクイーズアウトを行うのかを検討していきます。
スクイーズアウトのメリットについては、以下の2つの軸から整理していきます。
- 第1の軸:
- 多数株主のプラス面の向上
- 少数株主がいることのマイナス面の解消
- 第2の軸:
- 定性的事項
- 定量的事項
これらの2つの軸の組み合わせから、スクイーズアウトのメリットを以下の4つに区分して整理していきます。
- スクイーズアウトのメリット① 多数株主のプラス面の向上×定性的事項
- スクイーズアウトのメリット② 少数株主がいることのマイナス面の解消×定性的事項
- スクイーズアウトのメリット③ 多数株主のプラス面の向上×定量的事項
- スクイーズアウトのメリット④ 少数株主がいることのマイナス面の解消×定量的事項
以下、個別に検討していきましょう。
スクイーズアウトのメリット① 多数株主のプラス面の向上×定性的事項
まず、スクイーズアウトのメリットの1つ目の分類である「多数株主のプラス面の向上×定性的事項」から見ていきます。
こちらに分類されるメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 意思決定の迅速化
- 長期的視点での経営
以下、個別に検討していきましょう。
意思決定の迅速化
まず、意思決定の迅速化についてです。
多数株主が存在する場合のプラスの面として、意思決定が早いということが挙げられます。
しかし、少数株主が発言力を有しており、多数株主として、少数株主の発言に対し一定の配慮をしなければならない場合、多数株主が単独株主(100%株主)の場合に比べ、意思決定のスピードが遅くなります。
スクイーズアウトにより、多数株主が100%の株式を保有することで、多数株主は、より迅速な意思決定を実現することができます。
長期的視点での経営
次に、長期的視点での経営です。
多数株主がいる場合のプラスの面として、長期的視点で会社を経営することができるという点が挙げられます。
しかし、一部の少数株主が、目先の株価の上昇期待から、短期的な業績改善を求めるケースがあります。このような場合、多数株主や経営陣は短期的な業績改善のプレッシャーにさらされ、長期的な視点を持って、会社経営をしていくことが難しくなります。
このようなケースにおいて、スクイーズアウトで少数株主を排除し、多数株主が単独株主(100%株主)となることで、より長期的な視点で経営に取り組むことができます。
スクイーズアウトのメリット② 少数株主がいることのマイナス面の解消×定性的事項
次に、スクイーズアウトのメリットの2つ目の分類である「少数株主がいることのマイナス面の解消×定性的事項」を見ていきます。
こちらに分類されるメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 敵対的株主の排除
- 株式分散リスクの解消
以下、個別に検討していきましょう。
敵対的株主の排除
まず、敵対的株主の排除です。
少数株主がいる場合のマイナス面として、少数株主が多数株主や会社に対して敵対的な株主であるというケースがあります。
あるいは、敵対的とまでは言わないまでも、多数株主や経営陣にとって望ましくない少数株主がいるということは、比較的よくあります。
このような場合、多数株主がスクイーズアウトにより少数株主を排除することで、敵対的な株主の存在というマイナス面を解消することができます。
株式分散リスクの解消
次に、株式分散リスクの解消です。
非上場の同族企業の場合、経営に関与していない親族が少数株主となっているケースも多くあります。このような少数株主が存在する場合のマイナス面として、少数株主に相続が発生し、株式が相続人に分割して承継され、株式がどんどん分散していくリスクが挙げられます。
このようなリスクを解消すべく、多数株主がスクイーズアウトを実施し株式を集約することで、株式分散リスクというマイナス面を解消することができます。
スクイーズアウトのメリット③ 多数株主のプラス面の向上×定量的事項
続いて、スクイーズアウトのメリットの3つ目の分類である「多数株主のプラス面の向上×定量的事項」を見ていきます。
こちらに分類されるメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 利益の取込
- 配当の取込
- 税務メリット
以下、個別に検討していきましょう。
利益の取込
まず、利益の取込についてです。
多数株主が法人の場合のプラス面として、会計上、子会社の利益の大半を取り込めるという点が挙げられます。但し、少数株主がいる場合、子会社の利益の一部は、当該少数株主に帰属することとなります。この点、多数株主からすると、「利益が少数株主に流出している」と捉えることもできます。
多数株主として、少数株主に流出している利益につき、自らで取り込みたいと考える場合、スクイーズアウトにより100%子会社化することで、全ての利益を取り込むことができます。
配当の取込
次に、配当の取込についてです。
多数株主の場合のプラスの面として、子会社の配当の大半を受け取れるという点が挙げられます。
但し、少数株主がいる場合、会社が配当を実施すると、少数株主も配当の一部を受領することになります。この点、多数株主からすると、「資金(配当)が少数株主に流出している」と捉えることもできます。
多数株主として、少数株主に流出している配当(資金)につき、自らで取り込みたいと考える場合、スクイーズアウトにより自らが100%株主となることで、全ての配当(利益)を取り込むことができます。
税務メリット
続いて、税務メリットについてです。
多数株主が法人である場合、子会社をスクイーズアウトにより100%子会社化することで、連結納税やグループ法人税制の適用を受けることができ、税務メリットを享受する余地があります。
スクイーズアウトのメリット④ 少数株主がいることのマイナス面の解消×定量的事項
続いて、スクイーズアウトのメリットの4つ目の分類である「少数株主がいることのマイナス面の解消×定量的事項」を見ていきます。
こちらに分類されるメリットとしては、次の点が挙げられます。
- 事務コストの削減
事務コストの削減
事務コストの削減について、見ていきます。
特に少数株主が多数いる場合のマイナス面として、株主総会の招集通知や株主の異動の管理など、一定の事務コストの負担が生じているという点が挙げられます。
このような場合、スクイーズアウトにより、株主が1名となることで、少数株主が多数存在したことに伴う事務コストを削減することができます。
以上が、スクイーズアウトの主なメリットになります。
スクイーズアウトの手法
続いて、スクイーズアウトの手法につき、検討していきましょう。
スクイーズアウトの手法として、以下の9つが挙げられます。
- 現金対価
- ①特別支配株主の株式等売渡請求
- ②株式併合
- ③全部取得条項付種類株式
- ④株式交換(現金対価)
- ⑤合併(現金対価)
- 株式対価
- ⑥株式交換(自社株式対価)
- ⑦三角株式交換
- ⑧合併(自社株式対価)
- ⑨三角合併
以下では、これらの各手法につき検討していきます。
現金対価と株式対価
個別の手法の検討に入る前に、現金対価と株式対価の区別について検討します。
スクイーズアウトの9つの手法は、現金を対価とする「現金対価」の手法と、スクイーズアウトの実施者などの株式を対価とする「株式対価」の手法に分けられます。
以下、簡単に概要を説明します。
現金対価
現金対価は、スクイーズアウトにより取得する株式の対価として、現金を支払うものです。
すなわち、現金対価の場合、多数株主は、スクイーズアウトにより、少数株主の保有する株式を取得し、その対価として、現金を支払います。
この結果、少数株主と対象会社の資本的な関係は無くなります。
なお、現金対価の手法のことを「キャッシュアウト」とも呼びます。
株式対価
株式対価は、スクイーズアウトにより取得する株式の対価として、スクイーズアウトの実施者である多数株主などの株式を支払うものです。
すなわち、株式対価の場合、多数株主は、スクイーズアウトで少数株主から株式を取得し、その対価として、自社などの株式を支払います。
結果として、少数株主は、対象会社との資本的な関係は無くなりますが、スクイーズアウト実施者などの株主となります。
以上が、現金対価と株式対価の概要です。
多数株主の議決権割合と代表的なスクイーズアウトの手法
次に、多数株主の議決権割合と、それに応じて用いられる代表的なスクイーズアウトの手法につき、整理します。
この点は、上図のように主に3段階に区別されます。
詳細は以下でも言及しますが、実務上の利便性から、多数株主の議決権比率に応じて、特別支配株主の株式等売渡請求、または株式併合のいずれかがスクイーズアウトの手法として用いられるのが一般的です。
以下では、9つのスクイーズアウト手法につき、個別に検討していきます。
スクイーズアウトの手法 ①特別支配株主の株式等売渡請求
まず、特別支配株主の株式等売渡請求についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…90%以上
- 株主総会の特別決議…不要(取締役会の承認)
特別支配株主の株式等売渡請求の場合、90%以上の議決権が必要となります。他のスクイーズアウト手法の場合は、原則3分の2(66.7%)以上のため、特別支配株主の株式等売渡請求の実施に際しては、他の手法に比べ、より多くの議決権が必要となります。
次に、株主総会の特別決議については不要であり、取締役会の承認で足ります。このため、他のスクイーズアウト手法に比べ、機動的に短期間で実施することができます。
スキーム
特別支配株主の株式等売渡請求のスキームは、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
特別支配株主は、株式等売渡請求につき対象会社に通知する - ステップ2.
対象会社は、取締役会決議により、株式等売渡請求を承認する - ステップ3.
特別支配株主は、売渡株主が保有する株式を取得する - ステップ4.
特別支配株主は、売渡株主に対し、対価を支払う - ステップ5.
結果としてスクイーズアウトが完了し、特別支配株主による100%化が実現される
以上が、現金対価のスクイーズアウトのひとつである特別支配株主の株式等売渡請求の概要です。
スクイーズアウトの手法 ②株式併合
次に、株式併合についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
株式併合の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。このため、取締役会の承認で足りる特別支配株主による株式等売渡請求の手法に比べ、やや機動性に欠けることになります。
スキーム
株式併合のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
株主総会で株式併合に関わる決議を行う - ステップ2.
複数の株式について併合を行い、少数株主の保有する株式を端株(はかぶ)とする - ステップ3.
対象会社は、少数株主から端株となった株式を取得する - ステップ4.
対象会社は、少数株主に対し、端株の対価を支払う - ステップ5.
結果として、株式併合によるスクイーズアウトが完了し、多数株主による100%化が実現される
以上が、現金対価のスクイーズアウトのひとつである株式併合の概要です。
スクイーズアウトの手法 ③全部取得条項付種類株式
次に、全部取得条項付種類株式についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
全部取得条項付種類株式の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
全部取得条項付種類株式のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
株主総会で全部取得条項付種類株式に関わる決議を行う - ステップ2.
株主が保有している株式につき、全部取得条項付種類株式に変更する - ステップ3.
対象会社は、全部取得条項に基づき、株主から種類株式を取得する - ステップ4.
対象会社は、取得した種類株式の対価として、別の種類株式(例えば普通株式)を交付する。ここで、多数株主が1株を受け取れるのに対し、少数株主は端株(はかぶ)となるよう、交換比率を調整する - ステップ5.
対象会社は、少数株主から端株となった株式を取得する - ステップ6.
対象会社は、少数株主に対し、端株の対価を支払う - ステップ7.
結果として、スクイーズアウトが完了し、多数株主による100%化が実現される
以上が、現金対価のスクイーズアウトのひとつである全部取得条項付種類株式の概要です。
スクイーズアウトの手法 ④株式交換(現金対価)
次に、株式交換(現金対価)についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
株式交換(現金対価)の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
まず、株式交換(現金対価)の場合、多数株主は法人に限られる点、ご留意ください。
株式交換(現金対価)のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を株式交換完全親会社、対象会社を株式交換完全子会社とし、両者で株式交換契約を締結する - ステップ2.
株主総会で株式交換に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主は、株式交換により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
多数株主は、少数株主に対し、株式の対価を支払う - ステップ5.
結果として、株式交換(現金対価)によるスクイーズアウトが完了し、多数株主による100%化が実現される
以上が、現金対価のスクイーズアウトのひとつである株式交換(現金対価)の概要です。
スクイーズアウトの手法 ⑤合併(現金対価)
次に、合併(現金対価)についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
合併(現金対価)の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
まず、合併(現金対価)の場合、多数株主は法人に限られる点、ご留意ください。
合併(現金対価)のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を存続会社、対象会社を消滅会社として、両者で合併契約を締結する - ステップ2.
株主総会で合併に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主(合併後の新会社)は、合併により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
少数株主に対し、株式の対価を支払う - ステップ5.
結果として、合併によるスクイーズアウトが完了し、少数株主の排除が実現される
以上が、現金対価のスクイーズアウトのひとつである合併(現金対価)の概要です。
スクイーズアウトの手法 ⑥株式交換(自社株式対価)
続いて、株式交換(自社株式対価)についてです。これ以降の4つについては、株式対価の手法になります。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
株式交換(自社株式対価)の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
まず、株式交換(自社株式対価)の場合、多数株主は法人に限られる点、ご留意ください。
株式交換(自社株式対価)のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を株式交換完全親会社、対象会社を株式交換完全子会社とし、両者で株式交換契約を締結する - ステップ2.
株主総会で株式交換に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主は、株式交換により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
多数株主は、少数株主に対し、対価として「自社の株式」を支払う。これに伴い、少数株主は、多数株主の株式を保有し、株主となる - ステップ5.
結果として、スクイーズアウトが完了し、多数株主による100%化が実現される
以上が、株式対価のスクイーズアウトのひとつである株式交換(自社株式対価)の概要です。
スクイーズアウトの手法 ⑦三角株式交換
続いて、三角株式交換についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
三角株式交換の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
「三角株式交換」の場合、多数株主の親会社も関係者として登場します。また、多数株主及び多数株主の親会社は、法人に限られる点、ご留意ください。
三角株式交換のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を株式交換完全親会社、対象会社を株式交換完全子会社とし、両者で株式交換契約を締結する - ステップ2.
株主総会で株式交換に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主は、株式交換により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
多数株主は、少数株主に対し、対価として「自社(多数株主)の親会社の株式」を支払う。これに伴い、少数株主は、「多数株主の親会社」の株式を保有し、同社の株主となる - ステップ5.
結果として、スクイーズアウトが完了し、多数株主による100%化が実現される
以上が、株式対価のスクイーズアウトのひとつである「三角株式交換」の概要です。
スクイーズアウトの手法 ⑧合併(自社株式対価)
続いて、合併(自社株式対価)についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
合併(自社株式対価)の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
合併(自社株式対価)の場合、多数株主は法人に限られる点、ご留意ください。
合併(自社株式対価)のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を存続会社、対象会社を消滅会社とし、両者で合併契約を締結する - ステップ2.
株主総会で合併に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主(合併後の新会社)は、合併により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
少数株主に対し、対価として「自社の株式」を支払う。これに伴い、少数株主は、多数株主の株式を保有し、株主となる - ステップ5.
結果として、スクイーズアウトが完了する
以上が、株式対価のスクイーズアウトのひとつである合併(自社株式対価)の概要です。
スクイーズアウトの手法 ⑨三角合併
続いて、三角合併についてです。
必要となる議決権割合と株主総会の特別決議の要否につき整理すると、以下の通りです。
- 議決権割合…3分の2(66.7%)以上
- 株主総会の特別決議…必要
三角合併の場合、他のスクイーズアウト手法と同様、3分の2(66.7%)以上の議決権が必要となります。
また、株主総会の特別決議が必要となります。
スキーム
三角合併の場合、多数株主の親会社も関係者として登場します。
また、多数株主及び多数株主の親会社は、法人に限られる点、ご留意ください。
三角合併のスキームの概要は、以下の通りです。
- ステップ0.
スクイーズアウト実施前 - ステップ1.
多数株主を存続会社、対象会社を消滅会社とし、両者で(三角)合併契約を締結する - ステップ2.
株主総会で(三角)合併に関わる決議を行う - ステップ3.
多数株主(合併後の新会社)は、合併により少数株主から株式を取得する - ステップ4.
少数株主に対し、対価として「自社(多数株主)の親会社の株式」を支払う。これに伴い、少数株主は、「多数株主の親会社」の株式を保有し、同社の株主となる - ステップ5.
以上の手続の結果により、スクイーズアウトが完了する
以上が、株式対価のスクイーズアウトのひとつである「三角合併」の概要です。
まとめ
今回は、上図のテーマに沿って、スクイーズアウトの概要につき検討しました。
主なポイントをまとめると、以下の通りです。
- スクイーズアウト(少数株主排除)とは
- 「①多数株主」が
- 「②少数株主の保有する株式」につき、
- 「③少数株主の承諾を得ることなく、強制的」に、
- 「④金銭などを対価に取得」すること
- スクイーズアウトの活用場面
- 既存の多数株主による100%化
- 例. 事業承継における後継者による株式集約や親会社による子会社の完全子会社化
- M&Aの買い手による100%化(いわゆる2段階買収)
- TOB(株式公開買付)による買収(非公開化)の場面で用いられるのが一般的
- TOB(株式公開買付)による買収(非公開化)の場面で用いられるのが一般的
- 既存の多数株主による100%化
- スクイーズアウトのメリット
- スクイーズアウトのメリット① 多数株主のプラス面の向上×定性的事項
- 意思決定の迅速化
- 長期的視点での経営
- スクイーズアウトのメリット② 少数株主がいることのマイナス面の解消×定性的事項
- 敵対的株主の排除
- 株式分散リスクの解消
- スクイーズアウトのメリット③ 多数株主のプラス面の向上×定量的事項
- 利益の取込
- 配当の取込
- 税務メリット
- スクイーズアウトのメリット④ 少数株主がいることのマイナス面の解消×定量的事項
- 事務コストの削減
- 事務コストの削減
- スクイーズアウトのメリット① 多数株主のプラス面の向上×定性的事項
- スクイーズアウトの手法
- 現金対価
- 特別支配株主の株式等売渡請求
- 株式併合
- 全部取得条項付種類株式
- 株式交換(現金対価)
- 合併(現金対価)
- 株式対価
- 株式交換(自社株式対価)
- 三角株式交換
- 合併(自社株式対価)
- 三角合併
- 現金対価
以上が、スクイーズアウト(少数株主排除)の概要です。