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通常、M&Aで最も重要視され、交渉の焦点となるのは価格です。
M&Aの取引対象である会社や事業は、それぞれの個別性が強く、また取引が頻繁に行われているわけではないため、適正価格を見出すのが簡単ではありません。
このため、売り手と買い手との間で価格に対する考え方や目線が異なり、交渉が難航しがちです。
とはいえ、これまで数十年に及ぶM&Aの実務の世界で、一般に浸透している「M&Aの価格の考え方」と呼べるものもいくつかあります。
その中でも、M&Aの現場で多く用いられている手法は、「マルチプル法(EV/EBITDAマルチプル)」と「年買法(修正純資産+のれん)」の2つです。
本記事では、マルチプル法を取り上げ、株式価値の考え方や計算方法、具体的な数値例につき、検討していきます。
なお、本記事の内容はこちらの動画でもご覧いただけます。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSoGotcha!(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
マルチプル法による株価の算定(計算例)
本記事では、M&Aにおけるマルチプル法による株式価値の算出方法につき、上図のテーマに沿って検討していきます。
なお、今回取り上げるマルチプル法は、M&Aの株式価値の算定で最も一般的であるEV/EBITDAマルチプル法を前提としている点、ご留意ください。
マルチプル法における株式価値の考え方
まず、マルチプル法における株式価値の考え方につき、見ていきます。
EV/EBITDAマルチプル法における株式価値の考え方は、大きく以下の4つのステップから構成されます。
- ①事業価値(EV)の算出
まず、対象会社のEBITDAと類似会社から算定したマルチプルを用いて、対象会社の事業価値(EV)を算出します。 - ②現預金等の加算
次に、事業価値(EV)に対象会社の現預金等を加算します。 - ③有利子負債の減算
続いて、事業価値(EV)と現預金等の合計額から、対象会社の有利子負債を減算します。 - ④株式価値の算出
結果として、対象会社の株式価値が算出されます。
この考え方が、マルチプル法における株式価値の算定の基本となりますので、きちんと理解しておきましょう。
マルチプル法の計算方法 全体像
次に、マルチプル法による株式価値の計算方法につき、整理していきます。
マルチプル法による株式価値の算定は、大きく以下の2つの段階に分けることができます。
- 第1段階:マルチプルの算出
- 第2段階:対象会社の株式価値の算出
第1段階では、対象会社に類似する上場会社(類似会社)の指標を用いて、マルチプル法で利用するマルチプルを算出します。
続く第2段階では、第1段階で算出したマルチプルを利用して、対象会社の株式価値を算出します。
以下、各段階の詳細につき、検討していきます。
マルチプル法の計算方法 第1段階 マルチプルの算出
まず、第1段階であるEV/EBITDAマルチプル法におけるマルチプルの算出過程につき、見ていきます。
マルチプルの算出過程は、次の7つのステップから構成されています。
- ステップ1-1. 類似会社の選定
- ステップ1-2. 類似会社の株式価値
- ステップ1-3. 類似会社の有利子負債
- ステップ1-4. 類似会社の現預金等
- ステップ1-5. 類似会社の事業価値
- ステップ1-6. 類似会社のEBITDA
- ステップ1-7. 類似会社のマルチプルの算出
- ステップ1-8. 採用するマルチプルの算出
以下では、各ステップの詳細について、検討していきます。
ステップ1-1. 類似会社の選定
まず、類似会社の選定です。
対象会社の事業内容や事業規模、成長段階などに類似した上場会社を「類似会社」として選定します。
類似会社の選定については、対象会社と類似した上場会社を厳密に選定しようとすると、類似会社の数が少なくなる、あるいは見つからないという事態に陥りがちですので、実務的には、対象会社と同じ業界に属する企業を類似会社として選定するのが一般的です。
類似会社の選定数については、厳密な決まりはありませんが、ある程度の平準化の観点から、3〜10社程度は選定しておくのが望ましいと考えます。
ステップ1-2. 類似会社の株式価値
次に、類似会社の株式価値についてです。
類似会社は上場会社であるため、日々株式市場で株式が取引されており、株価が付いています。類似会社の株式価値として、評価を行う日における類似会社の時価総額を確認します。
この点、類似会社の1株当たりの株価ではなく、時価総額である点、ご留意ください。
ステップ1-3. 類似会社の有利子負債
続いて、類似会社の有利子負債についてです。
具体的には、借入金や社債などの数値になります。
類似会社は上場会社であるため、有価証券報告書などで財務データが開示されています。それらのデータから、有利子負債の数値を確認します。
ステップ1-4. 類似会社の現預金等
続いて、類似会社の現預金等です。
ここで現預金等とは、より正確には非事業用資産を指します。
具体的には、現預金の他、有価証券や保険積立金、遊休不動産などが挙げられます。
こちらも有利子負債同様、開示されている財務データを確認し、数値を把握します。
ステップ1-5. 類似会社の事業価値(EV)
次に、類似会社の事業価値(EV)についてです。
EVはEnterprise valueの略称であり、日本語の直訳だと「企業価値」となりますが、「事業価値」を指します。この点、誤解しがちなのでご注意ください。
類似会社の事業価値については、まず類似会社の株式価値をスタートとし、有利子負債を加算し、現預金等を控除し、この計算の結果として事業価値が算出されます。
ステップ1-6. 類似会社のEBITDA
次に、類似会社のEBITDAを計算します。
EBITDAとは、Earnings Before Interest, Tax, Depreciation & Amortizationの略称であり、日本語では償却前営業利益と呼ばれます。
EBITDAは、簡易的には、以下の算式から算出されます。
- EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
ステップ1-7. 類似会社のマルチプルの算出
続いて、マルチプルの算出です。
マルチプルは英語のMultipleのことであり、「倍率」を意味します。
ステップ1-5で算出した事業価値とステップ1-6で算出したEBITDAを用いて、以下の算式から、類似会社のEV/EBITDAマルチプルを算出します。
- EV/EBITDAマルチプル=事業価値(EV)÷EBITDA
ステップ1-8. 採用するマルチプルの算出
続いて、採用するマルチプルの算出です。
一般的にマルチプルの算出にあたっては、類似会社を複数選定しています。
このため、ステップ1-2からステップ1-7を個社ごとに実施し、各社のマルチプルを計算し、その上で、各社のマルチプルの平均値や中央値を算出し、採用するマルチプルの水準を決定します。
以上が、マルチプル法の計算方法の第1段階であるマルチプルの算出です。
マルチプル法の計算方法 第2段階 対象会社の株式価値の算出
次に、第1段階で算出したマルチプルを用いて、対象会社の株式価値を算出します。
第2段階である対象会社の株式価値の算出は、次の6つのステップで構成されています。
- ステップ2-1. 対象会社のEBITDA
- ステップ2-2. マルチプル
- ステップ2-3. 対象会社の事業価値(EV)
- ステップ2-4. 対象会社の現預金等
- ステップ2-5. 対象会社の有利子負債
- ステップ2-6. 対象会社の株式価値
以下、各ステップを個別に検討していきます。
ステップ2-1. 対象会社のEBITDA
マルチプル法を用いて株式価値を算定するに当たり、最初に検討する対象会社の指標は、EBITDAになります。
前述の通りEBITDAは、簡易的には以下の算式から算出されます。
- EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
ステップ2-2. マルチプル
次に、マルチプルです。
こちらは、第1段階で算出し、採用したマルチプルを使用します。
ステップ2-3. 対象会社の事業価値(EV)
続いて、対象会社の事業価値(EV)についてです。
EV/EBITDAのマルチプルを利用した一般的なマルチプル法では、「対象会社のEBITDA×マルチプル」から、対象会社の事業価値が算出されます。
ステップ2-4. 対象会社の現預金等
次に、対象会社の現預金等についてです。
ここでいう「現預金等」とは、対象会社の非事業用資産を指します。
すなわち、事業に用いられていない遊休資産などを指しますが、具体的には、現預金、有価証券、保険積立金、遊休不動産などが挙げられます。
事業価値から株式価値を算出する過程で、現預金等の非事業用資産は、事業価値に加算されます。
ステップ2-5. 対象会社の有利子負債
続いて、対象会社の有利子負債についてです。
こちらは、対象会社が借りている借入金や社債などが挙げられます。
事業価値から株式価値を算出する過程で、有利子負債は、事業価値から減算されます。
ステップ2-6. 対象会社の株式価値
最後に、対象会社の株式価値についてです。
EBITDAとマルチプルから算出された事業価値(EV)を起点として、現預金を加算し、そこから有利子負債を控除すると、対象会社の株式価値が計算されます。
以上のように、マルチプル法では、第1段階で上場している類似会社の指標からマルチプルを計算し、そのマルチプルと対象会社の財務数値を用いて、第2段階で対象会社の株式価値を算出することができます。
以上が、マルチプル法による株式価値の算出方法の考え方です。
マルチプル法による株式価値の算出(数値例)
続いて、マルチプル法による株式価値の具体的な計算方法につき、検討していきます。
以下では、数値例を用いて、対象会社の株式価値を計算していきます。
計算にあたっては、前述のマルチプル法の計算方法の段階・ステップに従い、株式価値を算定していきます。
ステップ1-1. 類似会社の選定
まずは、第1段階から見ていきます。
ステップ1-1は、類似会社の選定です。
今回は、対象会社の事業内容等を踏まえ、A社からE社の5社の上場会社を類似会社として選定したものとします。
なお、各社の主要指標については、上図の通りと想定します。
ステップ1-2. 類似会社の株式価値
次に、ステップ1-2として、類似会社の株式価値を確認します。
類似会社は上場会社であるため、各社の評価基準日における株式価値、すなわち時価総額を確認します。時価総額は、「A社 時価総額」などと検索することで、直近の時価総額を確認することができます。
この点、繰り返しになりますが、上場会社の株価、すなわち、1株当たりの株価ではなく、時価総額である点、ご留意ください。
ステップ1-3. 類似会社の有利子負債
続いて、ステップ1-3として、類似会社の有利子負債の水準を確認します。
類似会社は上場会社であるため、有価証券報告書や四半期報告書で有利子負債の残高を確認することができます。
なお、決算直後は、最新決算期の数字を使うことで問題ありません。
一方、決算から一定期間経過し、四半期決算や中間決算が出ている場合、どの時点の数字を採用するかについては、検討が必要です。
この点、基本的には、最新の四半期決算または中間決算の数字を用いることで問題ないと考えます。
但し、業種や会社によっては、運転資金などの関係から、恒常的に期中と期末で有利子負債の水準が大きく異なるケースがあります。このような場合、いずれの時点の水準を採用すべきかは、会社や業界の特性を検討の上、決定する必要があります。
ステップ1-4. 類似会社の現預金等
次に、ステップ1-4として、類似会社の現預金等を考慮します。
有利子負債同様、類似会社は上場会社であるため、有価証券報告書や四半期報告書で現預金等の金額を確認することができます。
なお、現預金等は、上述の通り、広く非事業用資産を意味します。このため、類似会社の現預金に加え、売却可能と目される有価証券や保険積立金、遊休不動産などを現預金等として考慮します。
この際、採用する数値については、簿価ではなく「時価」あるいは「現金として換金可能と想定される金額」である点、ご留意ください。例えば含み損がある資産の場合、簿価ではなく換金後の受取想定金額が、現預金等に含まれる金額となります。
また、どの時点の現預金等を採用するかについては、有利子負債と同じ時点の現預金を採用することとなる点も、ご留意ください。
ステップ1-5. 類似会社の事業価値
続いて、ステップ1-5として、類似会社の事業価値(EV)についてです。
ステップ1-2からステップ1-4で確認した株式価値(時価総額)、有利子負債、現預金の数値から、事業価値(EV)を算出します。
ステップ1-6. 類似会社のEBITDA
次に、ステップ1-6として、類似会社のEBITDAを算出します。
EBITDAについても、類似会社は上場会社であるため、有価証券報告書や四半期報告書で数値を確認することができます。
上述の通り、簡易的には、EBITDAは以下の算式で算出されます。
- EBITDA(償却前営業利益)=営業利益+減価償却費+のれん償却費
ここで、採用するEBITDAの時点につき、補足します。EBITDAの時点については、ステップ1-3の有利子負債、及びステップ1-4の現預金の時点とリンクします。
ただ、ここで留意する必要があるのが、有利子負債と現預金は貸借対照表上のストック概念であるのに対し、EBITDAを構成する営業利益・減価償却費・のれん償却費は損益計算書上のフロー概念になります。
このため、例えば第3四半期の数値を基準とする場合、有利子負債と現預金等は、貸借対照表上の数値を基準に考えます(時価修正は個別に考慮)が、EBITDAの構成要素については、各四半期の数字を確認の上、4四半期分の数値を合計することで、直近12ヶ月分のEBITDAを計算します。
なお、ここで計算されたEBITDAのように、直近12ヶ月分として計算される指標のことをLTM(Last Twelve Months:直近12ヶ月)と言います。
ステップ1-7. 類似会社のマルチプルの算出
続いて、ステップ1-7は類似会社のマルチプルの算出です。
ステップ1-5で算出した事業価値(EV)、及びステップ1-6で算出したEBITDAからEV/EBITDAマルチプルを算出します。
具体的な計算式は、以下の通りです。
- EV/EBITDAマルチプル=事業価値(EV)÷EBITDA
この結果、類似会社の個社別のEV/EBITDAマルチプルが算出されます。
ステップ1-8. 採用するマルチプルの算出
第1段階の最後のステップとして、ステップ1-8は採用するマルチプルの算出です。
ステップ1-7でA社からE社の5社分のマルチプルが算出されましたので、これらの平均値や中央値を用いて、採用するマルチプルの水準を決定します。
ここで、今回のケースでいくと、E社の数値が他の4社と極端に違っています。このため、E社の数値は異常値として除外することとします。実務的にも、このような異常値については、採用するマルチプルの計算にあたっては、除外するのが一般的です。
今回、平均値としては3.33倍、中央値としては3.25倍と算定されていますが、中央値を採用することとします。
まず、以上がマルチプル法の第1段階であるマルチプルの算出です。
ステップ2-1. 対象会社のEBITDA
続いて、第2段階として、対象会社の数値と第1段階で算出したマルチプルを用いて、対象会社の株式価値を計算していきましょう。
第2段階の最初のステップとして、ステップ2-1は対象会社のEBITDAになります。
対象会社のEBITDAは、対象会社の決算書等の数値から計算します。
EBITDAについて、類似会社の場合と同様、以下の計算式から算定します。
- EBITDA(償却前営業利益)=営業利益+減価償却費+のれん償却費
なお、対象会社のEBITDAの時点については、類似会社のEBITDAの時点と合わせるのが望ましいと考えます。一方、対象会社が非上場会社の場合、会社によっては月次決算も十分に為されていないケースもありますので、その場合は直近決算の数値を用いて計算します。
ステップ2-2. マルチプル
次に、ステップ2-2はマルチプルです。
次のステップ2-3で事業価値を算出するに当たり、第1段階で算出したマルチプルを使用します。
ステップ2-3. 対象会社の事業価値(EV)
続いて、ステップ2-3は対象会社の事業価値(EV)です。
ステップ2-1の対象会社のEBITDA、及びステップ2-2のマルチプルから、対象会社の事業価値を算出します。
なお、EV/EBITDAマルチプル法における対象会社の事業価値の算出は、以下の式の通りです。
- 事業価値(EV)=対象会社のEBITDA×マルチプル
ステップ2-4. 対象会社の現預金等
次に、ステップ2-4は対象会社の現預金等についてです。
現預金等については、対象会社の決算書等から把握します。
ここでいう現預金等は、上述の通り、現預金に加え、有価証券や保険積立金も含んだ非事業用資産を指します。
対象会社の非事業用資産につき、現預金等として事業価値に加算します。
ステップ2-5. 対象会社の有利子負債
次に、ステップ2-5は対象会社の有利子負債についてです。
有利子負債等についても、対象会社の決算書等から数値を把握します。
こちらでは、対象会社の借入金や社債、役員借入金などにつき、事業価値から控除します。
ステップ2-6. 対象会社の株式価値
最後に、ステップ2-6は対象会社の株式価値の算出です。
ステップ2-3で算出した事業価値(EV)に現預金等を加算し、有利子負債を控除することで、対象会社の株式価値が算出されます。
以上が、マルチプル法による株式価値の算定過程の具体例です。
マルチプル法における留意点
続いて、マルチプル法において実際に株式価値を計算するに当たり、留意すべき点につき検討していきましょう。
マルチプル法における留意点として、以下の4点が挙げられます。
- 類似会社の選定
- 市場環境の影響
- 類似会社/対象会社のEBITDAがマイナスの場合、適用できない
- 対象会社のEBITDAの採用水準
以下、個別に見てきましょう。
類似会社の選定
留意点の1つ目として、類似会社の選定が挙げられます。
マルチプルの算出の基礎となる類似会社の選定は、一見簡単そうですが、実務上はなかなか難しいところがあります。
理由として、主に2点が挙げられます。
第1に、対象会社と類似した上場会社がなく、類似会社が選定できないケースがあるためです。
第2に、類似会社はあるが、1社〜数社といった少数しかないケースがあるためです。
このような場合、類似会社の対象範囲を「同一業界」などに広げるのが一般的ですが、対象範囲を広げると、類似性は低下していきます。このため、価格の妥当性も低下していきます。
このように、マルチプル法を用いる場合、そもそもの類似会社の選定が容易ではない点、認識する必要があります。
市場環境の影響
留意点の2つ目として、市場環境の影響が挙げられます。
マルチプル法は、上場会社の株式価値、すなわち時価総額を参照しているため、株式市場の影響を受けます。
このため、市場が特殊な状況にある場合や短期的に大きく変動している場合、その指標を直接採用すべきかについては、検討する必要があります。
類似会社/対象会社のEBITDAがマイナスの場合、適用できない
留意点の3つ目として、類似会社または対象会社のEBITDAがマイナスの場合、マルチプル法を適用できないという点が挙げられます。
まず、類似会社のEBITDAがマイナスの場合、算出されるマルチプルもマイナスとなるため、マルチプル法で使用することができなくなります。
また、対象会社のEBITDAがマイナスの場合も、算出される事業価値がマイナスとなるため、マルチプル法を使用するのが適当とは言い難くなります。
対象会社のEBITDAの採用値
留意点の4つ目として、対象会社のEBITDAとして採用する値が挙げられます。
マルチプル法における事業価値(EV)は、EBITDAとマルチプルから算出されます。このため、EBITDAとしてどの数値を採用するかは、重要な問題になります。
この点、対象会社のEBITDAが安定している場合は問題ありませんが、例えば、対象会社のEBITDAが大きく増減しているような場合、どの水準を採用すべきかについては、検討の余地があります。
この点、実務的には、対象会社の事業内容等を踏まえつつ、正常なEBITDA水準を想定し、それに基づいて事業価値を算出するなどの対応が考えられます。
以上が、マルチプル法における留意点となります。
以上、今回は以下のテーマに沿って、マルチプル法による株式価値の算定方法や計算式、具体的な計算例につき、検討しました。