目次
この記事にたどり着いたということは、M&A業界に興味を持っている方でしょうか。
あるいは既に一歩踏み込んだ方でしょうか。
この記事では、私が実際にFA業務に従事していた経験を生かし、FAの仕事の全体像を紹介したいと思います。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
M&AのFAとは?
FAとはフィナンシャル・アドバイザーの略で、売り手か買い手のどちらか一方についてM&Aをサポートする専門家のことです。
そして、M&A専門家はその立ち位置によって2つのタイプに区別されます。
- FA型・・・売り手か買い手のどちらか一方の側について、案件のサポートを行う
- 仲介型・・・売り手と買い手の間に立ち、両者を取り持つ(=仲介する)立場で、取引に関与する
今回はセルサイドFAの業務に注目しているので、売り手側につくFA型のM&A専門家の業務ということです。
なお、本記事ではざっと全体感をご紹介しますので、「セルサイドFAってこんな事してるんだな」と大まかにイメージしてもらえたらOKです。
▽関連動画:M&A専門家とは??M&Aの関係者(5)【M&Aのプロが解説!】
セルサイドFAの業務内容
さて、それでは早速セルサイドFAの仕事について説明していきたいのですが、実際のM&Aのプロセスの流れに沿って整理するとわかりやすいと思います。
M&Aは、大まかに次のようなプロセスで進みます。
- (全般)
- 準備
- 打診
- 基本合意
- 買収監査(DD)
- 最終契約
- 取引実行
A〜GそれぞれのプロセスにおけるFAの業務を解説していきますが、各プロセスの最後に載せている動画でもう少し詳しく解説していますので、気になるポイントはぜひ動画も確認してみてください。
なお、今回紹介する動画はこちらの再生リストにもまとまっています。
▽関連動画再生リスト:セルサイドFAの業務内容!【M&Aのプロが解説!】
それでは、FAの業務をざっと見ていきましょう。
A.全般
- スケジューリング+プロセス管理…案件全体のスケジュール管理を行う。特に取引実行日が決まっている場合は、それに間に合うようスケジュールを組み、遂行していく必要がある
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容!(1)その全体像は??【M&Aのプロが解説!】
B.準備
- バリュエーション…今回の取引の対象となる会社や事業の値段を売り手に示すために、初期的な企業価値評価を行う
- スキーム検討…売り手の意向や取引対象を踏まえ、株式譲渡や事業譲渡など、どのM&Aスキームにするのか検討する
- 買い手候補先リストの作成とネームクリア…買い手候補先となりそうな企業のリストを作成し、その中のどこに打診するか売り手と協議する。なお、この打診先選定のことをネームクリアという
- ティーザーとIMの作成…買い手候補先への打診用資料として、ティーザーとIMを作成する。ティーザーとは、譲渡対象となる会社について、名前を明かさずに(=ノンネームで)まとめた資料。ノンネームシートともいう。また、IM(=Information memorandum:インフォメーションメモランダム)とは、後述のNDA締結後に買い手候補先に配布する企業概要書のこと
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容!(2)売却のための準備とは??【M&Aのプロが解説!】
C.打診
- ティーザーの配布…ネームクリアで選定した買い手候補先に、ティーザーを配布する
- NDAの締結…ティーザーに興味を示した買い手候補先に対してより詳細な情報を提供するため、その買い手候補先とNDA(=秘密保持契約。NDAはNon-disclosure Agreementの略)を締結する。なお、売り手の意向によっては売り手と買い手が直接NDAを締結するケースもある
- IMの配布…NDA締結後、その買い手候補先に対しIMを配布する
- 面談設定…売り手と買い手候補先との面談を設定する。多くの場合、売り手と買い手が初めて直接会う場となるため、非常に重要な面談となる。FAは必要に応じて面談を取り仕切り、両者が前向きに検討できるようサポートする
- 意向表明書の検討サポート…買い手候補先から初期的な価格などの条件を記載した意向表明書が提示されるので、どの買い手候補先と交渉を進めるかどうか売り手が検討するのをサポートする
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容!(3)買い手への打診とは??【M&Aのプロが解説!】
D.基本合意
- 基本合意書についてのサポート…M&Aを本格的に検討することになった場合、売り手と買い手で基本合意書を締結する。FAは、その作成や条件面の交渉などをサポートする
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容!(4)基本合意のサポートとは??【M&Aのプロが解説!】
E.買収監査(DD)
- インフォパック準備のサポート…DDに先立ち、ほとんどのDDで要求される資料一式を予め準備しておくと便利なので、FAはその準備をサポートをする。通常、DDの初期に開示される資料一色のことをインフォパック(インフォメーション・パッケージの略)と呼ぶ
- VDRの手配…資料をやり取りするためのオンラインストレージを手配する。M&Aでは、オンライン上の資料の保管場所のことをVDR(バーチャルデータルーム)と呼ぶ
- Q&Aの取りまとめ…DDでは数百単位のQ&Aをエクセルなどでやり取りする。FAはそのスケジュール管理や回答済みの質問の消し込み、重複した質問への対応などの取りまとめを行う
- マネイン・Q&Aセッションの設定…DDのQ&Aは上記のようなエクセル形式だけでなく、面談や電話会議で行うこともあり、FAはその日程調整やロジの手配、アジェンダの整理などの取りまとめを行う。マネインとはマネジメント・インタビューの略で、経営陣のインタビューのこと
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容#5|買収監査(DD)のサポート【M&Aのプロが解説】
F.最終契約
- 最終契約書についてのサポート…DDの結果を踏まえ、M&A実施の方向で売り手と買い手が合意した場合、取引実行のための最終契約書を締結する。契約書のベースは弁護士が作成するが、FAはM&Aの知見を生かしてその作成をサポートしたり、買い手との条件交渉のサポートをしたりする
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容#6|最終契約のサポート【M&Aのプロが解説】
G.取引実行
- CP充足のサポート…多くの場合、契約締結から取引実行までの間にCPを充足するための期間が設けられ、FAはCP充足の手続きをサポートをする。CPとは取引実行のための前提条件のことで、例えば必要書類の整備や許認可の確認などが挙げられる
▽関連動画:セルサイドFAの業務内容#7|取引実行のサポート【M&Aのプロが解説】
まとめ
以上が、セルサイドFAの業務の全体像です。
全体像を駆け足で説明しましたが、FAがどのような仕事をしているのかイメージがついたなら幸いです。