目次
今回は、メザニンファイナンスについて取り上げます。
複数回に渡ってメザニンについて紹介していきますが、今回はメザニンファイナンスとは何か?という基本的なところについてお伝えしようと思います。
なるべくわかりやすく解説していきたいと思いますので、ぜひお付き合いください。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
メザニンファイナンスとは
メザニンファイナンスは、負債と純資産の間に位置し、ミドルリスク・ミドルリターンの特徴を持つファイナンスのことです。
1階部分にあたる純資産と、2階部分にあたる負債の間にあることから、中二階を意味するメザニンと呼ばれます。
純資産と負債と合わせて、次のように整理できます。
- 負債…シニアローン
- 中二階部分…メザニン
- 純資産…エクイティ
また、メザニンは具体的に次のような形で提供されます。
- 劣後ローン(メザニンローン)
- 優先株式
- 劣後債
ただし、劣後債は法的な使い勝手の観点から実務上あまり用いられないため、解説は省略させていただきます。
本記事では、
- シニアローンやエクイティと比較した場合のメザニンの特徴
- 劣後ローンと優先株式の違い
についてご紹介していこうと思います。
▽関連動画:メザニンファイナンスって??/メザニン(1)【M&Aのプロが解説!】
シニアローンやエクイティとの比較
それでは早速、シニアローン・メザニン・エクイティの3つについて、それぞれの特徴を整理してみましょう。
《資金の提供者》
- シニアローン…シニアレンダー、LBOレンダー (例)銀行、信用金庫
- メザニン…メザニンレンダー、メザニンプロバイダー (例)メザニンファンド、リース会社、保険会社
- エクイティ…エクイティスポンサー (例)株主、親会社、ファンド
《リスク・リターン》
- シニアローン…ローリスク・ローリターン
- メザニン…ミドルリスク・ミドルリターン
- エクイティ…ハイリスク・ハイリターン
ここで、ミドルリスク・ミドルリターンというメザニンの特徴について深堀してみます。
メザニンファイナンスの特徴(ミドルリスク・ミドルリターン)
本記事では、次のように軸を設定します。
- リスク…回収順位
- リターン…投資倍率(=投資資金に対する回収金額割合)
それでは、シニアローンやエクイティと比べてどのように「ミドル」なのでしょうか。
ミドルリスク
リスク、すなわち回収順位についてです。
これは、基本的に次の順位で回収されます。
- シニア
- メザニン
- エクイティ
そもそもの大原則として、「負債→純資産」という順位で回収されます。
加えて、メザニンファイナンスにおいては、担保や保証の順位について、シニアレンダー・エクイティスポンサー・メザニンレンダーとの間の合意によって、明確な優先劣後構造を規定します。
具体的な例を考えてみましょう。
例えば、資金提供先の会社が破綻したとします。
この場合、回収できる金額が限定的となります。
先ほど確認した回収順位に則り、シニア→メザニン→エクイティの順に資金を回収します。
すると、シニアは全額回収できたとしても、メザニンは当初の投資額の一部のみしか回収できなかったり、エクイティについては全く回収ができなかったりするケースも生じます。
このように、回収順位を軸に各レンダー・スポンサーのリスクを比較すると、メザニンがミドルリスクと言われる由縁がわかるかと思います。
- シニア…回収順位が高い => 相対的にリスクが低い => ローリスク
- メザニン…回収順位が中程度 => リスクも中程度 => ミドルリスク
- エクイティ…回収順位が低い => 相対的にリスクが高い => ハイリスク
ミドルリターン
では、同様にリターンについても見ていきましょう。
一般的な投資倍率の大きさは、大きい順に次のような並びになります。
- エクイティ
- メザニン
- シニア
こちらも、具体的な例を用いてイメージしてみます。
例えば、回収可能額が当初の投融資額に比べて増えているとします。
しかし、シニアが回収できるのは「元本の額面+金利」に限られます。
メザニンが回収できるのも「元本の額面+金利」ですが、メザニンの金利はシニアの金利より高いため、投資倍率はシニアに比べ大きくなります。
加えて、メザニンに新株予約権が付されている場合には、それを行使することにより、さらに高い投資倍率を実現できます。
そして、エクイティが回収できるのはシニアとメザニンが回収した後の残額全てです。
よって、回収可能額が当初の投融資に比べて大きく増大した場合には、エクイティは非常に高い投資倍率となります。
このように、投資倍率を軸に各レンダー・スポンサーのリターンを比較すると、メザニンがミドルリターンと言われる理由がわかるかと思います。
- シニア…投資倍率が低い => 相対的にリターンが低い => ローリターン
- メザニン…投資倍率が中程度 => リターンも中程度 => ミドルリターン
- エクイティ…投資倍率が低い => 相対的にリターンが高い => ハイリターン
▽関連動画:メザニンのミドルリスク・ミドルリターンってどういうこと??/メザニン(2)【M&Aのプロが解説!】
劣後ローンと優先株式
さて、先ほど、メザニンファイナンスは劣後ローンや優先株式の形で提供されるといいました。
そこで、劣後ローンと優先株式、それぞれどのような特徴があるのか次のように整理してみました。
劣後ローン
劣後ローン(メザニンローン)とは、シニアローンに劣後するローンのこと。
すなわち、シニアローンに比べて元本の返済や利息の支払い、担保などが劣後しているローンのことです。
劣後ローンは負債にあたるため、純資産にあたる優先株式やエクイティ(普通株式)には優先して資金を回収できます。
なお、シニアローンと劣後ローンの優先劣後構造については、シニアレンダーとメザニンレンダーによる債権者間協定によって規定されるのが一般的です。
優先株式
優先株式とは、配当や残余財産の分配などが普通株式(エクイティ)に対して優先する株式のことです。
優先株式は純資産に該当するため、資金を回収する場面において、負債にあたるシニアローンや劣後ローンには劣後します。
すなわち、シニアローンや劣後ローンが回収された後にしか回収できません。
なお、エクイティスポンサーが提供するエクイティとの優先劣後関係がどこで規定されるかというと、株式の発行会社となる資金提供先の会社の定款やエクイティスポンサーとメザニンレンダー間の株主間契約です。
なお、実務上は、シニアレンダーの要請によって、劣後ローンではなく資本性を有する優先株式を利用するケースが多いです。
▽関連動画:メザニンの劣後ローンと優先株式って??/メザニン(3)【M&Aのプロが解説!】
まとめ
さて、今回は中二階と呼ばれるメザニンファイナンスにスポットライトを当ててご紹介しました。
メザニンはその活用場面によってバイアウトメザニンとコーポレートメザニンに分類できるのですが、この点については別の機会に取り上げたいと思います。