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M&A・事業承継を検討する時、株式譲渡や事業譲渡など、どの方法で実施するか迷うこともあると思います。
そして、「税金」も重要なポイントです。
取引実行後、思ったより手元に資金が残らなかった・・・!という事態にならないためにも、事前に確認しておきたいところです。
そこで、M&Aの代表的なスキームである株式譲渡と事業譲渡を比較しながら、課税関係についてまとめていきましょう。
《執筆者》
PEファンド・M&Aアドバイザリーの実務経験があるSOGOTCHA(ソガッチャ)スタッフが執筆しました。
株式譲渡と事業譲渡における課税関係早見表
株式譲渡と事業譲渡における主な課税関係をまとめると、上図のようになります。
では、それぞれの立場/スキーム別に詳しく見ていきましょう。
売り手に対する課税
株式譲渡(売り手は法人)
法人が株式譲渡で利益を得た場合、株式譲渡益に対して法人税等が課されます。
その税率は、一般的には法人実効税率と呼ばれ、企業規模や地域によって差があります。
例えば、執筆時点(2020年4月17日)において、東京都にある資本金1億円以上の標準課税の会社の場合、法定実効税率は約30%となります。
なお、法人実効税率には、次の5つの税が含まれます。
- 法人税
- 地方法人税
- 住民税
- 事業税
- 地方法人特別税
繰り返しになりますが、企業規模や地域によって違いがあります。
実際の税率については、顧問税理士に相談したり、商工会議所の無料相談を利用したりするなど、税理士資格のある方にご確認ください。
株式譲渡(売り手は個人)
個人が株式譲渡で利益を得た場合、株式譲渡益に対して株式譲渡益課税が課されます。
株式譲渡益課税の税率は、執筆時点(2020年4月17日)で20.315%です。
なお、最新の情報は国税庁のホームページでご確認ください。
事業譲渡
事業譲渡に伴い譲渡益が発生した場合、事業譲渡益に対して法人税等が課されます。
株式譲渡の場合と同様です。
すなわち、スキームによらず、「利益が出たかどうか」という観点で判断します。
▽関連動画:株式譲渡と事業譲渡の比較#23|売り手に課される税金【M&Aのプロが解説】
買い手に対する課税
株式譲渡
株式譲渡の場合、買い手に対して課税関係は生じません。
なお、日常生活で何かモノを買うときの一番身近な税は消費税ですが、株式は消費財でないため株式譲渡は非課税取引とされており、消費税もかかりません。
事業譲渡
事業譲渡の場合は、買い手に様々な税負担が生じます。
主な税を挙げると、
- 消費税
- 不動産取得税
- 不動産登録免許税
など。
株式譲渡は非課税取引なのに事業譲渡は様々な税が発生する理由は、事業譲渡は個別の取引の集合体だからです。
すなわち、事業譲渡は譲渡の対象となる資産・負債を個別に特定し、それぞれについて事業譲渡契約を締結する(取引を行う)という形になっているからです。
だから、例えば商品や在庫などの棚卸資産を引き受ける場合は課税取引となり、消費税が課されるというわけです。
なお、消費税についてはこちらの記事で詳しく書いていますので、合わせてご覧ください。
▽関連記事:事業譲渡には消費税が課される!株式譲渡と比較しながらわかりやすく解説
▽関連動画:株式譲渡と事業譲渡の比較#24|買い手に課される税金【M&Aのプロが解説】
まとめ
さて、今回は株式譲渡と事業譲渡における課税関係について解説しました。
結論、この表が内容のすべてです。