横浜銀行の人事戦略|ソリューション・カンパニーに向けたソリューション収益力の強化

横浜銀行の人事戦略|ソリューション・カンパニーに向けたソリューション収益力の強化

横浜銀行の人事戦略|ソリューション・カンパニーに向けたソリューション収益力の強化

この記事では、横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)の人材戦略について取り上げます。

同行の人材戦略のポイントは、以下の通りです。

・ソリューション・カンパニーを目指す経営戦略と連動した人事制度

・ソリューション収益力強化のため、量・質の両面からソリューション人材を増強

・ソリューション人材だけでなく、市場・国際やIT・デジタルなどの専門人材の育成にも注力

・人材戦略は3つの基本テーマ「人づくり」「組織づくり」「環境づくり」の各施策を通じて具体化

以下、詳しく見ていきます。(同行の資料では「人財」という表記が用いられていますが、本記事では他記事と表記を合わせる観点から「人材」となっている点、ご容赦ください)

経営戦略と連動した人材戦略

経営戦略と連動した人材戦略

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

横浜銀行(正確には、同行を中心とするコンコルディア・フィナンシャルグループ)は、自身の目指す姿として、「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」を掲げています。

同行の経営戦略は「ソリューション・カンパニー」を実現すべく策定されており、その経営戦略に連動する形で人材戦略も策定されています。

ソリューション・カンパニーの実現を目指す上で、人材戦略の方向性として次の3点が示されています。

ソリューションビジネスをドライバーとした企業価値向上に向けた人的資本への投資強化

・経営環境の変化に対応した、最適かつ多様性に富んだ人材ポートフォリオの構築

エンゲージメントを高め、人的資本への投資効果を最大化するための社内環境整備

こちらの1点目で示されているように、同行の経営戦略・人材戦略のポイントのひとつが「ソリューションカンパニーを目指すためのソリューション収益力の強化」です。この点を中心に、同行の人材戦略について見ていきます。

量・質両面でのソリューション収益力の向上

量・質両面でのソリューション収益力の向上

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

横浜銀行は、ソリューション・カンパニーを目指すにあたり、ソリューション収益額の向上を「量」「質」両面からの拡大を図っています。

「量」=営業人員

ソリューションビジネスを支える営業人員の増加を計画しています。具体的には、「2021年度約2,290名(ソリューション営業人員1,430名)」であった営業人員について、「2024年度約2,350名(同1,500名)」→「2027年度約2,500名(同1,600名)」と増員していく予定です。営業人員の増加に伴い、出向者などを除いた実働人員に占める営業人員の割合も「2021年度約48%→2024年度約50%→2027年度約60%」と増加していく見通しです。

具体的な増員方法として、3つの方向性が示されています。

リスキリング

店頭サービスの本部集中化・非対面化のシフト等による事務量の減少に合わせて、事務人員を営業人員等へリスキリング

新卒採用

中長期的な人材ポートフォリオ構築のベースとなる新卒採用において、より質の高い人材を確保するための競争力を強化

キャリア採用

本部直接営業を中心とした収益貢献度の高い部門に専門性の高い人材を即戦力として配置すべく、キャリア採用活動を強化

「質」=一人あたりソリューション収益額

ソリューション収益力強化の質の側面として、一人あたりソリューション収益額の増加を企図しています。具体的には、「2021年度約80百万円」の一人あたりソリューション収益額について、「2024年度約85百万円」→「2027年度約90百万円」への増加を計画しています。

これを実現するため、2023年度においては、15.3億円(一人あたり1百万円)の人的資本投資を予定しております。人的資本投資の大枠は、以下の3つに分けられます。

人づくり 10.5億円

研修参加者人件費、外部出向費用、自己啓発支援金など

組織づくり 2.4億円

採用活動費用、初任給引上相当分、タレントマネジメントシステム機能向上費用など

環境づくり 2.3億円

評価者教育費用、従業員意識調査費用、若手職員給与引上相当額など

人材戦略|3つの基本テーマ

人材戦略|3つの基本テーマ

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

横浜銀行は「ソリューション・カンパニー実現を目指したソリューション収益力の強化」を大方針としつつ、それを支える人材戦略の3つの基本テーマを設定しています。

基本テーマ①人づくり

基本テーマの第1は、成長意欲・挑戦意欲を大切にする「人づくり」です。長期的に目指す姿であるソリューション・カンパニーの実現のためには、ソリューション提供活動を行う担当者のスキルや専門性の向上が重要としています。

「人づくり」では、具体的な施策として、以下の4つが挙げられています。

・ソリューション・ビジネスの担い手の拡大・質の向上

・専門人材の育成強化

・主体的な挑戦・成長機会の提供

・次世代経営人材の計画的な育成

基本テーマ②組織づくり

基本テーマの第2は、多様な人材がいきいきと活躍できる「組織づくり」です。同行は、多様化・高度化する顧客ニーズに最適なソリューションを提供し続けるためには、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人材が最大限個々の能力を発揮できる組織づくりが重要であるとしています。

「組織づくり」では、具体的な施策として、以下の4つが挙げられています。

・多様な人材の確保に向けた戦略的な採用活動の実践

・タレントマネジメントの高度化

・DEIのさらなる推進

・シニア人材の活用推進

基本テーマ③環境づくり

基本テーマの第3は、個々のWell-beingを起点とした「環境づくり」です。「組織作り」と並び、個々の従業員が能力を最大限に発揮するためには、活力ある組織風土や安心して働ける職場環境も重要と捉えられています。

「環境づくり」では、具体的な施策として、以下の2つが挙げられています。

・活力ある組織風土の醸成

・心身ともに健康で安心して働ける職場環境の整備

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以下、各施策について見ていきます。

人づくり|施策① ソリューションビジネスの担い手の拡大・質の向上

人づくり|施策① ソリューションビジネスの担い手の拡大・質の向上

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

横浜銀行の目指すソリューション・カンパニーを実現すべく、ソリューション営業人員の量・質両面の拡大・向上の観点から、以下のような施策が実施されています。

スキル認定制度

営業店におけるソリューション営業の担い手の拡大を図るべく、ソリューション営業人員に求められるスキル・知識を「スキル習熟度」「教養」「実績」の3要素に分類し、スキルレベルを可視化しています。個々人の習熟度に応じた教育・研修機会を提供し、各人のスキルアップを図っています。スキル認定制度は、営業店全体のスキル引上げという機能を担っています。

OJTとOff-JTの連動

横浜銀行は、ソリューション営業担当者のスキル育成にあたり、OJTとOff-JTの連動を強く打ち出しています。Off-JTでは、部門別・スキル別に集合研修を実施しスキルの習得を図り、OJTで集合研修の学びを活かせる案件を担当するという人材育成体制を整えています。

教育研修投資の強化

同行は、集合研修・eラーニング・外部派遣研修などを通じて一人あたり研修時間・研修費用を増加し、ソリューション営業人員育成のための教育研修投資を強化しています。

2022年度教育研修投資実績:研修費用1.4億円、年間総研修時間51,040時間、一人あたり研修時間14.1時間、研修参加人数1,473名

ソリューション営業部門の強化

本部のソリューション営業部門について、営業店のスキル上級者の本部への異動、政府系金融機関・メガバンクなどへの派遣、ソリューション営業経験者のキャリア採用などにより、計画的な人員増強を図っています。

また、本部のソリューション営業部門経験者を計画的に営業店に配属することで、本部のみならず営業店も含めたグループ全体のソリューション営業体制の強化を図っています。

人づくり|施策② 専門人材の育成強化

人づくり|施策② 専門人材の育成強化

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

横浜銀行では、ソリューション人材とは別に、市場・国際・IT・デジタル部門などで活躍する専門的なスキル・知識を有する人材を「専門人材」として計画的に育成しています。

市場・国際部門

市場・国際部門においては、トレーニー制度や海外拠点を活用した人事ローテーション、国内外の金融機関への教育派遣などにより、同行のプロフィットセンターとしての強化を図っています。

IT・デジタル部門

IT・デジタル部門においては、同行のDX戦略実現のための高い専門性が求められることから、専門人材として必要な要件を定義し、スキルチェックに基づく計画的な人材育成が図られています。IT・デジタル専門人材の数について、「22年度103名→24年度136名→27年度170名」と計画しています。

人づくり|施策③④ 挑戦・成長機会の提供+次世代経営人材の育成

人づくり|施策③④ 挑戦・成長機会の提供+次世代経営人材の育成

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

挑戦・成長機会の提供

「人づくり」の第3の施策は「主体的な挑戦・成長機会の提供」です。

キャリアオーナーシップ

個々の従業員が自らキャリアを主体的に考え、自律的にキャリアデザインを描き、行動する風土を醸成する「キャリアオーナーシップ」の浸透を図っています。

行内公募・リスキリングチャレンジ

個々の従業員の自己啓発意欲を高め、主体的なキャリア形成を図るための公募制度です。

行内公募は、キャリアステージに関わらず応募できる制度です。また、リスキリングチャレンジは営業店や本部の事務担当者向けの公募制度であり、現在のスキルと今後必要となるスキルのギャップを埋めるリスキリングに挑戦する仕組みです。

次世代経営人材の育成

「人づくり」の第4の施策は、「次世代経営人材の計画的な育成」です。「マネジメント力」「戦略理解力」「巻き込む力」などをテーマとした研修などを通じて、候補者プールの拡大と登用管理に努めています。

組織づくり|施策①② 戦略的な採用活動+タレントマネジメントの高度化

組織づくり|施策①② 戦略的な採用活動+タレントマネジメントの高度化

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

戦略的な採用活動

組織づくりの第1の施策は、「多様な人材確保に向けた戦略的な採用活動」です。

情報発信強化・接点拡大

SNSなどを通じた情報発信やオープンカンパニー・企業説明会などのリアルな接点の拡大に努め、入社前後のミスマッチの抑制を図っています。

専門人材の採用

IT・デジタル分野の専門人材の積極的な確保を図るべく、新卒採用におけるコース別採用を実践しています。

採用ルートの多様化

リファラル(紹介・推薦)採用やアラムナイの採用など、従前とは異なる採用ルートを通じたソリューション人材やIT・デジタルの専門人材のキャリア採用に努めています。

タレントマネジメント

同行では、タレントマネジメントシステム(タレントパレット)を導入し、個々の従業員のスキル・知識・適性・キャリアデザインなどの情報を一元的に管理し、従業員の能力を最大限発揮する戦略的な人事運用に努めています。

タレントマネジメントシステムを通じた「スキルの可視化」及び「適材適所の人員配置」の実現を図っています。

組織づくり|施策③④ DEI推進・シニア人材支援

組織づくり|施策③④ DEI推進・シニア人材支援

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

DEIの推進

組織づくりの第3の施策は、「DEIのさらなる推進」です。横浜銀行は待てリアリティのひとつに「働き方改革・ダイバーシティの推進」を掲げており、女性管理職比率の引き上げや産休・育休者の復職支援、海外拠点の現地採用・外国籍人人材の管理職登用、障がい者雇用などを進めています。

シニア人材の活躍支援

組織づくりの第4の施策は「シニア人材の活躍支援」です。銀行業務を通じて培った知識・スキルをリフレクション(振り返り)し、アンラーニング(学びほぐし)した上でリカレント教育・リスキリングを施した上で、セカンドキャリアの構築を支援するものです。

環境づくり|施策①② 組織風土・職場環境

環境づくり|施策①② 組織風土・職場環境

(出所:同行IR資料「人材戦略」)

活力ある組織風土の醸成

環境づくりの第1の施策は「活力ある組織風土の醸成」です。キャリアオーナーシップに基づくキャリアデザインや目標管理(MBO)による人材評価制度などを通じて、仕事のやりがい・働きがいのある組織風土の醸成を図っています。

健康・安心な職場環境の整備

環境づくりの第2の施策は「心身ともに健康かつ安心して働ける職場環境の整備」です。男性の育児休暇、配偶者出産時の特別休暇などのワークライフバランス支援休暇やテレワーク・サテライトオフィスなどによる働き方改革「はまぎんスタイル」、「健康経営」の取り組み、ファイナンシャルウェルネスなど、従業員の心理的安全性の向上が図られています。

まとめ

最後にまとめです。本記事では、横浜銀行の人事戦略について取り上げました。

主なポイントは、以下の通りです。

・ソリューション・カンパニーを目指す経営戦略と連動した人事制度

・ソリューション収益力強化のため、量・質の両面からソリューション人材を増強

・ソリューション人材だけでなく、市場・国際やIT・デジタルなどの専門人材の育成にも注力

・人材戦略は3つの基本テーマ「人づくり」「組織づくり」「環境づくり」の各施策を通じて具体化

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